2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年8月25日

 このような事件は、サウジ内のシーア派のほとんどが住み、石油産出の中心である東部地区でのサウジの管理には限界があることを示している、と述べています。

出 典:David Gardner‘The toxic rivalry of Saudi Arabia and Isis’(Financial Times, July 16, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/8bba2ab4-2b00-11e5-8613-e7aedbb7bdb7.html#axzz3g6t3XYpt

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 スンニ派の総本山を持って自ら任じているサウジにとって、シーア派の総大将のイランの勢力拡大は放置できないものだと思います。イランの勢力拡大は、積極的戦略に基づくものではなく、イラクの場合は米国によるサダム・フセイン排除、イエメンの場合には長年の部族抗争の結果です。上記論説が、イランとその代理人が、アラブ世界に起きた騒乱につけこんで勢力を伸ばしたと言っているのは、その通りでしょう。

 ただし、サウジにとっては、シーア派イランの勢力拡大自体が問題なのであり、それがイランの戦略に基づくものかどうかは問題ではありません。

 サウジはISと、どちらがシーア派を厳しく罰するかで争っているといいます。

 そうでなくとも、スンニ派とシーア派は厳しく争っているのに、このようなIS要因が入ってくることにより、スンニ派サウジとシーア派イランとの対立はさらに厳しくならざるを得ません。ワッハーブ主義は、サウジ王国の拠って立つ基盤の一つですが、サウジの対外政策の柔軟性に障害となり得ます。サウジがISと、どちらがシーア派を厳しく罰するかで争うというのは、ワッハーブ主義のなせる業です。ISとの戦いでサウジ、イランの双方の協力を得たい米国にとって、これは頭の痛い問題です。

 米国としては、核合意を受けて、イランが中東で責任ある振る舞いをすることを望んでいるのでしょうが、少なくとも、サウジ・イラン関係に関する限りは、近い将来に基本的対立が緩和する見通しは立てにくいでしょう。

  
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