ヒットメーカーの舞台裏

2015年8月26日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 歯磨きと歯周病予防など口腔ケアの両方ができる。最大の特徴は抗菌成分や香料といった原料の全てが天然由来であることだ。これによって飲み込んでも消化されるので、腹痛を起こすこともないという。幼児や高齢者に安心して使えるため、使用者だけでなく介護をする人の負担軽減にもつながる良品だ。

九州の梅やおから等、原料が天然由来のため、誤飲しても腹痛を起こさない

 透明なジェル状タイプ(容量75グラム)と、液体スプレー(30ミリリットル)の2種類があり、ほかに登山者らに好評を得ているコンパクト型も設定している。価格はいずれも1000円(税抜き、以下同)。発売は2013年7月で、今年7月までの1年間は前年比で約5倍の1億円弱を売り上げた。海外からも注目されており、今秋からドイツ、スウェーデンなど欧州5カ国で発売予定だ。

 事業運営もユニークで障害者の就労支援スキームを導入している。その仕組みはトライフ(横浜市中区)が障害者に650円で商品を供給、卸売りや小売りによって250~350円が障害者の収入になる。すでに全販売数量の半分ほどがこのスキームに乗り、障害者の雇用を促進している。こうした社会性の高い事業方式も評価され、国内のベンチャー企業顕彰で権威のある「ジャパンベンチャーアワード」の15年表彰では最優秀の経済産業大臣賞に輝いた。

 トライフは代表取締役の手島大輔(45歳)と取締役の永利浩平(44歳)の2人だけで運営するベンチャーだ。2人の出会いは11年春。オーラルピースの主成分である抗菌剤「ネオナイシン」の原型成分の量産技術を九州大学などとの産学協同で開発した永利が、事業化を手島にもちかけたのだった。

 ネオナイシンは、おからなどに住む乳酸菌が作る成分に梅エキスを配合した抗菌剤で、今年になって国内特許が成立した。永利がかつて在籍した乳業会社時代に研究に着手、02年からほぼ10年がかりで開発した。ただし、事業化への道は決して平たんでなかった。そこで、永利は大手商社やコンサルティング会社を経てオーガニック化粧品などを手掛けていたトライフの手島に「この人となら道が拓けるはず」と、アプローチしたのだった。

 もっとも、直ちに手島が口腔ケアへの展開を着想したわけではなかった。転機となったのは、手島が重篤な父親の介護で、歯磨きやうがいが、いかに大変かを実感したことだった。こうして永利が開発したシーズが口腔ケアというニーズに結びついた。

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