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2016年1月29日

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名取洋之助写真賞受賞作品写真展は1/29より開催

 賢君を撮影したいとの依頼があった時、お母さんの督子さんは、「この人になら安心してお願いできる」と感じたという。「うまく言葉にできないけど、彼女の持つ、前に出過ぎない雰囲気というか。私、かなり人見知りで、初対面から普通に話せる人はあまりいないんですけど、彼女に初めて会った時から変な緊張感はなく、普通にいられたんです。その時の感情は今も変わらず、一緒にいていい意味で普通。祥恵さんは、ずいぶん前からの知り合いで友達のような存在ですね」

 「一瞬一瞬を撮ってくれていて嬉しい」と話す鳥飼氏の写真は、非常に贅沢なことだと感じているという。「毎回練習や試合に付き添っていても、表情までは分からないんですよね。その時々の息子の表情を残してもらえて、『こんな顔をするようになったんだ』とか、『こんなことをチームの人にしていたんだ』って分かるのが嬉しいです。自分で写真を撮っていると、あんなに上手く撮れないのはもちろんですが、撮ることに集中しちゃうから自分の心にも残らないんですよね。だから最近では息子や娘の運動会などでもあまり写真を撮らなくなっちゃいました」と笑いながら教えてくれた。

「今、アンプティサッカーとは別にもう一つ興味があることがあって。まだ公表できるような段階ではないのですが、撮り続けて形になればいいな、という風に思っています」と、現状について教えてくれた(撮影:筆者)

 受賞について鳥飼氏は「業界では知られている正統派の写真賞で、受賞自体に目が向けられがちなんですが、それよりも、写真の中にあるけんちゃんのストーリーを見て欲しいと思っています。写真に私らしさは出ていると思いますが、自分を表現しているものではありません。主役は私ではなく、けんちゃんです」と語った。

 今回応募作品の選考審査会を行った日本写真家協会では、鳥飼氏の受賞理由を写真評論家の飯沢耕太郎氏がこう説明している。「人間関係が希薄になりつつある今、一人の男の子の成長をポジティブな眼差しで見守る大人たちの姿が、いきいきと浮かび上がってくる」。30枚の写真には、アンプティサッカーのプレーだけではなく、家族やチームメイトとの交流が自然に捉えられている。子どもが当たり前に持つ、明るさや優しさ、気難しさなどを包み込む大人がいるということ、そして愛され、守られて育つ大事さを、写真から感じることができる。

賢君の兄としての顔が見える一枚。兄妹で育つ楽しさが感じられる(撮影:鳥飼祥恵)

 今回の名取洋之助写真賞の受賞で、もう一人の主役である石井賢君。お母さんによると、「写真には特に関心がない」とのこと。ただ、今回の受賞作30点のうち、1枚だけは、「これ、かっこいい僕だ」と笑顔を見せたという。

 2015年第11回名取洋之助写真賞受賞作品写真展は、1/29より2/4までが東京六本木で、2/19より2/25までが大阪本町で、ともに富士フイルムフォトサロンで行われる。どの写真が本人も認めるかっこいい賢君なのか、写真展で探してみようと思っている。

  
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