オトナの教養 週末の一冊

2016年5月28日

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シェール革命も応急処置

 「注目」の技術の一つで、「エネルギー革命の創造主」と称賛される水圧破砕法でさえ、本書では「短期的な応急処置」と斬られている。

 シェール岩層に閉じ込められている石油や天然ガスを取り出す水平掘削や水圧破砕法の利用が急拡大したことで、米国の天然ガス生産量は増加に転じた。いわゆる「シェール革命」である。

 ところが、「クリーンエネルギー経済への橋渡し的燃料」といわれてきた天然ガスも、「その輝きを失いつつある」と、著者はいう。

 <エネルギー生産時、天然ガスの燃焼で排出されるCO2は石炭燃焼の場合のわずか半分である。だが、ガス田やパイプライン、タンクから、温室効果がCO2よりもはるかに高いメタンが大量に漏出する場合が多いことから、実は、天然ガスは気候に対してより大きな悪影響を与える可能性があることが、最近の研究によって明らかになっている。>

 「よりクリーンな、枯渇しないエネルギー源を選んで、化石資源から離れていく動き」が、石油、石炭、原子力の衰退に続いて、ソーラー、風力、地熱、水力発電の順で、さまざまなデータや発言を連ねながらあぶりだされる。

 とりわけ、石炭、石油、天然ガスの多くが「座礁資産」と呼ばれるものになるだろう、という予測には、戦慄を覚えた。

「座礁資産」の概念

 気候変動を背景とする「座礁資産」の概念は、英国を拠点とする非営利団体カーボン・トラッカーが2011年に発表した「燃やせない炭素」という報告書によって注目された。

 気温上昇を2℃以内に抑えるシナリオに基づいて2050年までに1000ギガトンしか化石燃料を燃やせないとすると、埋蔵量のうち1860ギガトンは地中に残したままになる。埋蔵量は価値を失い、「座礁資産」となる。

 エネルギー転換が進行中の国々では、炭鉱、ウラン鉱山、油田、製油所、深海掘削装置、石油パイプライン、ガソリンスタンドなどが座礁資産となっていくだろう、と著者は予測する。

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