東日本大震災から5年。わが国のエネルギー政策は揺れに揺れた。
気候変動対策として主役に躍り出つつあった原子力発電に急ブレーキがかかり、電力不足を補ったのは天然ガス、石炭、石油の火力発電である。ただ、この”応急処置”は、一方で温室効果ガスの排出を大きく増やすという副作用をもたらした。
さらに、電力自由化ともあいまって、ベースロード電源(燃料費が比較的安く、毎日一定の電気を発電する中核の電源)として石炭火力を増やす動きがある。
ところが、昨年末にパリで開かれたCOP21で世界各国が気候変動対策にそろって乗り出したことで、世界の潮流は明らかに転換した。
CO2排出量シェア3%のわが国も、手をこまねいてはいられない。35%の大幅なエネルギー効率の改善、再生可能エネルギーと原子力発電の増加により、2030年までに2013年比26%のCO2削減を目標として表明した。
大転換はどのようにして起きるのか?
「主に石炭や石油で動く経済から、太陽や風を動力源とする経済へと私たちを導く転換」が次の10年間に起こるだろう、と予測するのが、本書である。
著者は、長らくワールド・ウォッチ研究所長を務め、2001年からは非営利研究機関アースポリシー研究所を率いるレスター・ブラウン。筋金入りの”環境派”の視点として読む必要はあるが、それでもなお、「大転換」が起こりつつある事実に目を見開かされる。
「視点はグローバルなものであるが、『世界のエネルギー経済に関する包括的な調査』を意図したものではない」と、序文にもあるとおり、原子力をはじめ、エネルギー効率やスマート・グリッド、省エネルギー、燃料電池といったテーマについては、表面的な記述にとどまる。第4章「衰退する原子力」では事実誤認と思われる記述もある。
とはいえ、本書の目的は「この大転換がどのように展開しはじめているかを描くこと」であり、その試みは成功している。