オトナの教養 週末の一冊

2016年5月28日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 これをさらに加速させているのが、「化石燃料への投資の引き揚げ」を求める社会運動である。スタンフォード大学、ロックフェラー兄弟財団などの例が紹介されている。

新しいエネルギー経済は民主的

 <学生や地域社会のグループが大学基金や年金基金に対して、投資ポートフォリオを再構築し、化石燃料会社株の保有をなくすよう圧力をかけている。それは、気候を乱すエネルギー源に対する支援を公然と否定しようという考え方だ。>

 しかも、「古いエネルギー経済は、化石燃料が埋まっている場所を握っている者によってがっちりと管理されていた」。これに対し、再生可能エネルギーを主役とする「新しいエネルギー経済ははるかに民主的だ」。「風と太陽は、人が住んでいる場所であればどこであっても利用できる」。

 この事実が、従来のエネルギーインフラを持たない発展途上国において、エネルギー転換に有利に働いている。電話回線網の整備をはしょって携帯電話を使い始めたのと同様に、途上国では一足飛びに屋上ソーラーパネルに進める、というわけだ。

 ソーラーと風力で課題とされている供給の不安定さについては、より大規模な送電網の整備が進めば、「風力やソーラーのような間欠性の資源から生まれる電力を、より広範な地域に過不足なく届けることがさらに容易になるだろう」という。

 欧州や米国の送電線網計画とともに、米国カリフォルニア州、ドイツ、デンマーク、スペインで進んでいる「リパワリング(設備の入れ替えで出力増強を図ること)」も、風力が伸びる要因になっている。

 私は1980年代からの各年代の風力タービンが回るカリフォルニア州の大規模風力発電基地を見たことがあるが、本書によると、80年代に設置された小型タービン438基に代わり、2・3メガワットの風力タービン34基が設置されたそうである。全体での設置容量はほぼ同じだが、新型の高効率タービンは2倍以上の電力を生み出せるという。

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