都会に根を張る一店舗主義

2016年6月16日

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 さて、担当のK女史が元気な男の子を出産して復職、乗じて長いことお休みしていた連載の記念すべき再開号だから、今回はとっておきの店をご紹介しよう。

 海外や遠方から友がやってきた時、よく連れていく店。そして、お高いミシュラン店などをめぐった後でも、有名店のオーナーやソムリエといった外国人の食通が感動してくれるのが、普茶料理の専門店『梵』である。普茶料理はお精進なので、たとえばインドの菜食主義者やアメリカ人のビーガンの学生さんでも喜んでいただいける貴重な店でもある。

かつての寺町、入谷の風情を残す大正時代の木造建築『梵』

 場所は入谷。地下鉄日比谷線の入谷駅から歩いて5分ほど。ミシュラン店でご馳走すれば破産しかねないが、ここならば、大事な友ならば手の届く価格帯だ。

 そう、入谷といえば恐れ入谷の鬼子母神、などと歩き出してみるも、落語などでお馴染みの下町の風情はあまり残っていない。下町を中心とした執拗な空爆と大震災で、残念ながら古い木造建築や路地の風情はほとんど焼失してしまった。けれども、震災後に建てられたという木造建築の二階家『梵』だけが、忽然と、異空間に迷うかのような風情を醸している。

 脇で柳が涼しげに揺れる格子戸をくぐり、玄関をがらがらと開くと、中は昼間でもやや暗めの落ち着いた照明。しかも接待場に選んだ者には有難いことに、すべて個室である。二人で予約しても個室だから、外国人でなくとも、ご馳走してあげたい特別な“お友だち“をお誘いするのもいい。

少人数でも落ち着く小ぶりな個室は、それぞれ違う。2階の広間は、大勢でも会食もできる広さ。漆の座卓は東大寺二月堂に置かれたそれを模して特注したもの

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