世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月23日

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 ネオコンの論客であるロバート・ケーガンが、5月18日付のワシントン・ポスト紙で、トランプ現象は、建国の父たちが最も恐れていた「群衆主義」であり、米国にファシズムをもたらし得ると警告しています。論説の要旨は以下の通りです。

 トランプ現象は政策や理念とは関係が無い。増大するトランプ支持者は共和党のことなど気にかけず、トランプにのみ忠誠を誓っている。トランプへの支持は経済的停滞や苦境からくると想定されていたが、トランプが支持者に提供しているのは経済的救済策ではなく、粗野な力のオーラであり、民主主義の文化の蔑視である。トランプの発言は怒りや軽視、恐れを扇動する。これは、極めて危険なものになっている。

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「群衆主義(mobocracy)」

 トランプが取り込んだ有権者層は、建国の父たちが最も恐れていた大衆の情熱の開放、「群衆主義(mobocracy)」である。これは、アレクシス・ド・トクヴィルが警告した、自由に対する1つの脅威である。すなわち、興奮し、怒り、制御されない大衆が、彼らの自由を擁護するために作られた制度を全く無視しかねないという脅威である。

 フランス革命の展開を見たアレクサンダー・ハミルトンは、フランスで起きたと同様、解き放された大衆の情熱が大衆の上に権力を築く専制君主を生む現象が米国でも起こることを懸念した。この現象は過去1世紀、他の民主主義国、半民主主義国で起こり、一般に「ファシズム」と呼ばれた。これらのファシズムの本質は、政策ではなく、国の運命をゆだねる指導者であった。

 現在の米国では、多くの者は通常の政治とは全く異なることが進行していることを認めようとしない。嵐が過ぎれば正常に戻れると考えている。トランプに助言し、トランプが正しい道を歩むよう導けると思っている。

 トランプは共和党とは関係なしに、献身的な支持者によって大統領になる。支持者は今日では有権者の5%だが、大統領になるということは国民の過半数が支持者になるということである。彼がどのような権力を手中に収めるかは、想像に難くない。

 これが、ファシズムが米国に来る筋書きである。病的な自己中心主義者が大衆の怒りや不安に乗じる一方、共和党全体が野心か、党に対する盲目的忠誠心か、単なる恐れからトランプに従うことによって起こるのである。

出 典:Robert Kagan ‘This is how fascism comes to America’(Washington Post, May 18, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/this-is-how-fascism-comes-to-america/2016/05/17/c4e32c58-1c47-11e6-8c7b-6931e66333e7_story.html

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