対談

2016年12月8日

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 救世主か、それとも人類の敵か――ビッグデータを解析し未知の可能性を描くだけでなく、それにより自らの解析の方法そのものまで深化させていくAI(人工知能)の発達がめざましい。しかしそのスピードに、人間側の認識はそれに追いついているだろうか。人とAIの関係をもっと幸福なものにするために、必要な思考法とは何か。

ビッグデータは仮説の《外》にある可能性を引き出す

飯田:ビッグデータに関心のある経済学者は多いのですが、経済学者にしろ、あるいは一般の方はなおさら「サンプル数がものすごく増えた」と理解しがちです。今までの小さなサンプルでの統計と、これからのビッグデータ解析とは質的になにが違うのでしょうか?

矢野:ビッグデータだけではなく、さらにAIが加わったことで、今まで人間の分析者がやっていたことまでも機械がやるようになった、そこが最大の違いです。

矢野和男氏

飯田:これまでの統計分析ではベースとなる回帰モデルを作って、どのデータを使ってそのモデルを推計するのかが専門家の腕の見せ所でした。つまりそこに人間の仕事があったわけですね。でもビッグデータを扱えるほどコンピューターの性能が上がると、どのデータを選ぶかを気にする必要もなくなるということでしょうか。

矢野:逆に人為的にデータを選ぶことで、データが持っているポテンシャルを見失いかねないと考えています。これまでは回帰式の形をまず決めて、でもパラメーターくらいはデータに合わせようというのが基本的なスタンスでした。でも今はデータドリブンで回帰式の形を決めさせるというやり方、つまり逆のアプローチに変わってきています。

 仮説先行ではないので、データのどこからどこまでを取り込むのか、その範囲設定もかなりアバウトになりました。人間が恣意的な仮説で制約しないように、あえて広めに入れているんです。AIにより分析するための式があとから作られることに最大の違いがあります。

 これにより、人間の仮説の外側にある新しい可能性が浮かび上がります。その可能性のなかに店舗の売り上げを上げる要素も、物流センターの生産性を上げる要素もあるかも知れない、というわけです。意外なところでは、人間の行動のデータを入れると、人間の幸福感を非常によくあらわす変数が出てきたりもします。

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