WEDGE REPORT

2017年1月13日

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崔 碩栄 (チェ・ソギョン)

ジャーナリスト

1972年韓国ソウル生まれ。韓国の大学で日本学を専攻し、1999年渡日。関東地方の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。現在、フリーライターとして活動、日本に関する紹介記事を中心に雑誌などに寄稿。著書に『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社刊)、『「反日モンスター」はこうして作られた-狂暴化する韓国人の心の中の怪物〈ケムル〉』(講談社刊)がある。

あまりにも対照的な中国大使館前の「少女像」対応
「中国を刺激してはならない」「設置すれば撤去」

 実は、韓国には外国大使館前に「少女像」を設置しようとする市民運動がもう一つある。それは、中国大使館前に「脱北者少女像」を設置しようとする運動だ。北朝鮮から脱北を図る人々が現在も絶え間なく中国へと渡っているのだが、中国当局は彼らを保護することなく、北朝鮮に送り返している。これに対して抗議する人権団体の運動である。

 中国から北朝鮮に送還された脱北者たちは収容所に連れて行かれ処刑されるケースが多い。このような脱北者の人権を考えない中国を非難する意味で「脱北者少女像」を中国大使館前に建てようというのだ。この運動は北朝鮮脱北者を支援する市民団体により始められた。北朝鮮と中国を同時に批判するという意図が込められた活動である。

 ところが、(慰安婦問題とは異なり)現在も被害者が続出しているこの問題に対して韓国政府もマスコミも無関心だ。外交部は「中国を刺激してはならない」と設置に対して憂慮を示し、中国大使館が位置するソウル市中区庁は「脱北少女像を道路に設置することは不法であり、設置されれば撤去せざるを得ない」(国民日報 2014.3.10)と設置を認めない方針を明らかにしている。「国民感情」を理由に日本大使館前への少女像設置を黙認する対応とはあまりにも対照的な反応である。

 日本大使館、領事館前の少女像設置は黙認しておきながら、中国大使館前の少女像設置に対しては厳格な措置をとる。この韓国の対応が示唆しているのは以下の二点である。

 一点目、中国に対する怯え。同じ行動をしたとしても日本は我慢するだろう、あるいはすべきだという意識があるが、中国にはそんな甘えが通用しないことを知っているのだ。韓国がサード(米国の高高度ミサイル防衛システム/THAAD)配置を決定すると、中国は直ちに韓流コンテンツの制限に踏み切ったように、中国が具体的「報復」行為に踏み切ることを恐れているのだ。

 二点目、現在進行形の深刻な人権問題にも関わらず、韓国マスコミが無関心であるために、あるいは無関心を装っているために、ほとんど話題になっていないという点である。この問題が話題になれば、中国も北朝鮮も国際的非難を浴びることになるのは間違いない。それなのに韓国の主要マスコミはこの運動にほとんど触れずにいる。同じ市民運動でも日本ではなく、中国や北朝鮮を批判する活動は韓国マスコミの支持を得ることができない「ジャンル」であるということだ。

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