家電口論

2017年2月8日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 2016年12月の洗濯表示の変更。一見、ユーザーにしわ寄せが来ているように見える。しかし、一番変わったのは、服を作るアパレルメーカーと、クリーニング店。このうち、クリーニング店を中心に、今の洗濯事情をレポートする。

(iStock)

洗濯表示はどこが決めるのか?

 日本の洗濯行政はかなり古い。それはクリーニングの元締めが厚労省ということでも分かる。クリーニングは未だに「生活美」の観点ではなく、「衛生」の管轄下にある。

素材を示す「組成表示」。指定された16種類の繊維名、と指定外繊維(一般名称または商標など)で示すことが義務付けられている

 実は、今回の改定で、洗濯表示は、アパレルが決めることとなった。それまではというと規格により定められていた。定めかたとしては、布地××が××%以上だと、××の洗い方で服を洗いなさいという感じ。ところが考えて欲しい。例えば現在流行っているファー(毛皮)。占める割合は数%もないのだが、ファーが目立たなかったら、魅力は半減する。90%ナイロンの衣類に、貝ボタンと襟にファーが付いているとする。ナイロンの衣類の洗い方で洗って、貝ボタンは割れ、ファーの毛はペッタリ寝てしまったとする。持ち主はきっと叫ぶ。「これは私の服ではない!」と。洗濯は素材と汚れにより、対応法が異なるが、それだけを追うと、元々持っていたファッション性を損なうことがある。このためのアパレル起用だ。デザイナーが、その服の魅力を知っているからだ。

 これらは海外では当たり前の方法。今回の改定により、日本の華の一つである「東京コレクション」を一般の人が安心して買えるようになったと言うと、言い過ぎだろうか?

アパレルに判断できるのか?

 画家を画による表現者、作曲家を音による表現者とすると、アパレルのデザイナーは服による表現者というべきだろう。表現者は、自分の表現に使う道具、素材を実によく熟知している。だからこそハイレベルの表現ができるのだ。しかし、ケアはどうだろうか? 画でも画家=修復家ではない。しかし洗濯の場合、これができるのだ。それは、標準の洗濯機、洗剤が決められているからだ。

 スウェーデンのエレクトロラックス社の特定洗濯機がそれに当たる。特定洗濯機というのは基本的な機能しか備えていない。特殊な方法を用いて、汚れが落ちたとしても、それは一般的な対応とならないからだ。その洗濯機を第三者のテスト機関が所有しており、アパレルメーカーは、そこにテストを委託、自分の考える洗い方で問題ないことを確認して指定するのだ。

 この海外基準採用の背景には、日本が特殊環境下にあることも考慮しなければならない。全国どこでも豊富な「軟水」は、日本独特の環境だ。ご承知の通り、軟水と硬水は、水1リットルあたりに含まれるカルシウムやマグネシウムの含有量で決まる。WHO(世界保健機関)が定める基準では硬度120mg未満が軟水、120mg以上が硬水とされている。

 この軟水には様々な魅力がある。例えば日本料理。素材の魅力を存分に出す薄味の日本料理は、水に香りも味もないのが前提。軟水は鉱物成分が少ないため、香り、味があっても超薄い。それ以外にも軟水はいろいろな特徴がある。洗剤の泡立ちが良いということなどもそう。端的に言うと日本の水は洗濯にすごく向いている。このため軟水をベースに作られた日本の基準は、水の違う海外では使えない。日本の衣類産業に国際競争力を持たせようとすると、洗濯は海外基準にして、日本の軟水のメリットは余力として享受することになる。

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