この熱き人々

2017年3月28日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

企画から音楽、演出を自ら手掛け実現させた舞台「印象派」が、自身の世界を発信する原点となった。歌手、俳優、パフォーマーetc.肩書に収まらない表現者の、目を見張る進化が止まらない。 

 カメラが向けられると、夏木マリの右手がすっと上に伸びた。シャッター音がすると、今度は流れるように前に。表情も身体の動きと連動するかのようにさまざまに変化する。撮影の様子を眺めながら、今この瞬間の夏木の心が身体全体を通して伝えられているような気がして、思わず目を凝らしてしまう。

 

 張り切った糸のような緊張感が漂う中で、目の前にいる夏木マリは果たして歌手? 俳優? パフォーマー? アーティスト? ダンサー? と突き止めようとしても、めまぐるしく回転してつかめない。でも、夏木マリという存在感は確かにそして強烈に放たれている。

 20代の頃の夏木は、歌手として知られていた。30代の夏木は、井上ひさし、鈴木忠志、蜷川幸雄など名だたる劇作家や演出家の舞台で活躍する舞台俳優として鮮明に記憶している。40代はシアターワーク「印象派」を自ら立ち上げ、斬新なひとり演劇に闘魂を燃やしている姿が浮かび、50代はそれに再び甦った歌手の姿が重なってくる。時に生まれ、時に消え、時に甦りながら、夏木マリという存在は多岐にわたる表現者として太い個性を発揮し続けているように思える。

 45年に及ぶ芸能活動の起点がアイドル歌手だったと聞くと、その時代を知らない人たちは信じられないという反応を示す。デビューは1971年、19歳の時である。

 「商社マンだった父がクラシックファンで、家には音楽があふれていて、もし仕事するなら音楽関係かなと思っていたけれど、歌手になりたいという気持ちはなかったですね。お嫁さんに行くまでピアノを教えようか程度の、ごく普通の女の子でしたから」

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