チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年3月29日

»著者プロフィール
閉じる

高田勝巳 (たかだ・かつみ)

株式会社アクアビジネスコンサルティング代表

株式会社アクアビジネスコンサルティング 代表取締役。拓殖大学で中国語を専攻し、1984年より1986年まで中国の遼寧大学、北京大学での留学を経て、1987年に当時の三菱銀行に入行。1993年より同行上海支店開設のために上海に赴任。1998年に同行を退職後、上海で独立し、それ以来上海を拠点としたコンサルタントとして活躍。2002年より現職。この間、多くの日中間のビジネスにコンサルタントとして関与、最近は日系企業の顧客以外にも中国企業の対日投資並びに技術導入も支援している。中国の第一財経テレビ、香港のフェニックステレビの時事討論番組のコメンテーターとしても活躍している。

 まず、先生は、鄧小平の改革を以下の通り総括する。

  1. 政治体制を変えずに経済制度を計画経済から市場経済に変えた。
  2. 人権(引越しの自由、職業選択の自由、企業の自由)と財産権を拡充した。
  3. 上記の二つの権利の拡充により所有制の構造が変わった。
  4. 変わらなかったのは、中央集権。権力の合法性は上部構造からくるもので、権力間の相互バランスはない。

 これが現在、中国モデルと言われる中央集権下の市場管理経済、即ち、「権控(権力にコントロールされた)経済」と言われるもの。

 次に中国の経済モデルを以下の通り総括する。

 ここでいう経済モデルとは。

  1. 価値の約束:国家または政府の国民に対する価値の約束。
  2. 制度のポジショニング:国家または政府の国民制度に対するポジショニング。
  3. 富の創造戦略がいかにその価値主張を満足させるか:すなわち、GDPの創造戦略。
  4. 富の分配戦略:GDPの分配問題。

 そして、中国の経済モデルは。

  1. 価値の約束:西側の国と変わらない、むしろ世界で最も素晴らしいかもしれない。すなわち、人権平等、財産権の保護、人民に服務、執政為民など。
  2. 制度のポジショニング:まず、第二に、財産権の境界が不明確で保護もない。権力の合法性は、上部構造からくるもので下部構造からくるものではない。(1)特権があり、人権は完全に平等ではない。境界が不明確。(2)財産権の境界が不明確で、厳格な保護がない。(3)権力の合法性は上部構造からくるもので、下部構造ではない。(4)パワーバランスがない。チェックアンドバランスがない。
  3. GDPの創造戦略:(1)第一は、主に政府の投資が需要を牽引するということ。政府は、高税率で富を国家に集中させ、財政投資と財政政策で経済を牽引する。これができるのは、上記の2点の制度のベースがあってこそできるもの。どうやってそんな高額の税金を取れるのか、それはそうした制度のポジショニングがあるからで、不完全な人権で財産権も厳格な保護を受けず、政府は取りたいだけ取り放題、だからこそ経済を牽引できるのである。(2)第二は、輸出戦略、輸出牽引。過去の30年、特に最近の10数年は、中国の経済成長において巨大な作用を果たした。その輸出けん引も、前提があり、それは労働者の最低賃金である。それで不満があってもデモをすることもできないので、この最低賃金を受け入れざるをえない。これによりコスト上のアドバンテージをもって国際市場で成り立っている。(3)第三は、都市化。都市の急速な拡張は、財産権の侵害ができるからこそできるもので、それがなければ住宅地の徴用と強制移転もできない。
  4. 富の分配戦略:(1)GDPに占める賃金の比率は、普通の国は25%程度であるが、中国は8%で世界で最も低いレベル。(2)これは高税率によって、国民の富を国家が吸収し、それを国家資本に転換して需要をけん引するベースになっている。(3)GDPに占める行政予算の比率は31%、国家の投資の比率は24%であり、GDPの60%近くが国家によって使われている。(4)残りの40%が民間企業と一般大衆の取り分で、このため、この分配戦略において、消費による内需は脆弱であると言える。(5)さらに、非常に非合理的なのは、この国家資本は、民間に流れずに、パワーエリートたちの権貴資本(http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%A2%B5%AE%BB%F1%CB%DC%BC%E7%B5%C1)に流れてしまうことにある。

関連記事

新着記事

»もっと見る