WEDGE REPORT

2017年4月12日

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木村史子 (きむらふみこ)

1988年渡英、97年~2009年日本テレビロンドン支局に勤務、欧州、中東、アフリカのニュース取材に関わる。海外取材歴26年。

モリア難民管理センター

 2015年、トルコの海岸からレスボス島を中心にギリシャの島々に渡った難民の数は85万6723人に達した。EU・トルコ合意によって16年は17万3450人に減り、今年は4月2日時点で4056人にまで激減している。難民には迫害の危険に直面する本国に送還されない「ノン・ルフールマン(非送還)の原則」が適用されるが、欧州難民危機を境に「難民(refugee)」と「出稼ぎ労働者、移住者(migrant)」が巧妙に使い分けられるようになった。

 国際NGO(非政府組織)「レスボスの欧州弁護団」を結成し、難民への法的支援を続けるドイツ人弁護士コルト・ブルーグマンから「EU・トルコ合意から1年経つので、現地に取材に来ないか」と誘われたのが、レスボス島を訪れた理由である。

 「レスボスの欧州弁護団」によると、レスボス島に上陸した難民は登録を済ませると、高いフェンスに囲まれたモリア難民管理センターに収容される。最初の25日間はセンターから出られない。その後は島内を自由に行き来できるようになるが、自らの意思で島を出ることはできない。ひたすら島で難民認定される日を待つことになる。難民認定されなかった場合は、トルコに送り返される。トルコは過激派組織IS(イスラム国)が活動するシリアとイラクを除いて、ほとんど自動的に本国に強制送還しているようだ。

 ギリシャ側は当初、「ノン・ルフールマンの原則」を厳格にとらえ、「トルコは安全な第三国ではない」として送還を渋っていた。これに業を煮やしたEUは昨年12月、「加盟国はEU域内の最初の入国地であるギリシャに難民を送り返してもよい。17年3月から実施する」と発表してギリシャに揺さぶりをかけた。EUはドイツの首相メルケルが欧州難民危機に際し「門戸開放」政策をとってなし崩しにしてしまった「EUに到達した難民は、最初の入国地でのみ難民認定審査を受けられる」というルール(ダブリン規則)を復活させた。

収容されている人々

 現在、レスボス島にいる難民は全員、EU・トルコ合意以降にやって来た人たちだ。最長で1年余、島のセンターで生活を続けていることになる。

 昨年11月、モリア難民管理センターの収容者数は5800人に膨れ上がった。夏用テントがひしめく環境は劣悪で、衛生状態も悪く、カギのついた女性専用トイレもなかった。食事もひどく、シャワーも温水もなかった。同センターの現在の収容者数は約50カ国2200人で、家族・女性・単身者に区分けされ、コンテナ住宅も次々と建造されている。

 センターの責任者によると、第一に住環境を、第二にコミュニケーションを大事にしているという。国ごとにリーダーを選び、毎晩リーダーがそれぞれの国の収容者と話をする。各国のリーダーは毎週金曜に集まって話し合いをするそうだ。

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