世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月27日

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ロシア外務省はこの問題を「偽ニュース」だと否定

 3月8日、セルヴァ統合参謀本部副議長は下院軍事委員会の証言で「ロシアはINF条約の精神と意図に違反する地上発射巡航ミサイルを配備した」と述べました。同副議長は、ロシアはNATOに脅威を与える目的で意図的に配備したものと思うとも述べています。詳細はまだ判然としませんが、2個大隊がロシア西部に配備されたということのようです。ロシア外務省はこの問題を「偽ニュース」だと否定しています。

 オバマ政権はこのミサイルがテスト段階にあるうちにロシアに是正を要求したが、収穫はなかったようです。トランプ政権がこの問題にどう対応するのか、この種の問題に折り目正しい対応をし得るかは、トランプ政権の体質を判断する手掛かりになるでしょう。

 INF条約はソ連が配備した核搭載の中距離弾道ミサイルSS-20の脅威に直面して、反核の嵐が西欧に吹き荒れる状況を押して、米国のパーシングIIミサイルと巡航ミサイルの西欧への配備に着手するという強い姿勢を維持しつつ、ロシアとの軍備管理交渉を行い、6年の難交渉の結果、双方の中距離ミサイルの全廃(いわゆる「ゼロ・オプション」)に合意するに至ったものです。当時、日本もこの問題に多大の関心を持ち、ロシア西部のSS-20が規制・廃棄される一方、極東への配備は自由とされアジアの脅威が放置されることは受け入れ難いと強く主張した経緯があります。中曽根総理が「西側の安全保障は不可分である」と語ったのはこの頃のことです。

 INF条約は救えないのかも知れませんが、論説が指摘する通り、米国が中距離ミサイルを開発することがロシアの脅威への答えになるとは思えません。他方、この条約に縛られている間に、ロシア周辺の条約の埒外にある北朝鮮、中国、イランが中距離ミサイルの開発を進めていることにプーチン大統領が不満を抱いていると言われます。そういう新たな状況があるので、もう一度考え直す必要があるのかも知れません。ともあれ、ロシアのミサイルの脅威に関心を持って然るべき諸国が沈黙したままという状況は、確かに奇異に思われます。

  
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