2024年4月27日(土)

WEDGE REPORT

2017年5月2日

世論調査は信用できるのか?――「隠れ保守」と「低い応答率」

 大きく揺れ動き続けている「世論調査」だが、今、韓国ではそもそも世論調査は信用できるのか、という問題が一つのトピックとして持ち上がっている。

 世論調査の結果と大きく異なる結果が出て話題となった事例といえば、昨年行われたアメリカの大統領選挙を思い浮かべる人が多いだろう。選挙戦当時、アメリカのマスコミの多くは、何度も行われた世論調査の結果からヒラリーの勝利を確実なものとして予測していた。ところが、実際の投票結果を見てみると勝利したのはトランプ氏だった。このような番狂わせがおこった原因の一つとして伝えられているのは「隠れ保守」つまりトランプ支持者だということを隠した支持者たちの数が世論調査には出てこなかったということだという。

 韓国でも最近同様の例が起きている。昨年5月に行われた国会議員の総選挙の前に行われた世論調査の結果からは、与党の過半数確保は間違いないとされていたが、蓋を開けてみれば苦戦の末に過半数確保に失敗。そこから朴槿恵政権のレームダックが加速した。

 そして今年の4月に行われた再・補欠選挙では政党支持率8%という世論調査の結果から惨敗が予想された与党が、全30の選挙区の中で14人が当選、7人の共に民主党、4人の国民の党を圧倒する強さを見せた。

 韓国において世論調査が信用できないと言われている理由の一つは「応答率」である。韓国の選挙世論調査では通常、最低1000名程度の応答数をもって結果を分析している。調査は電話で行われるのだが、調査に回答せずに電話を切る人が平均80%以上、つまり応答率は20%以下だという。最近4/17~4/25の間に中央選挙世論調査委員会に登録、公開された25の世論調査の応答率を見ると平均14.9%。この中には、応答率5%以下だった調査が7つもあった。

 応答率が示す意味は、例えば応答率が20%であったと仮定したときに、支持率調査のために1000人分の回答が必要な場合、5000通以上の電話をかけなければならないということである。そしてまた、回答しないことを選んだ4000人の意見は把握できていないということだ。このような調査結果が果たしてどこまで正確なのかと疑問視されているのである。

 そして、世論調査では、年令、地域、性向、性別などのファクターが、国民全体の縮図となっていることが要求されるわけだが、応答率が低いということは、調査に積極的な人々、つまり政治に関心が高く、通常調査が行われる昼間の時間帯に余裕があるという特定条件に当てはまる人々の意見ばかりを収集しているのが実情であろう。

 実際、ある世論調査機関は最近調査対象になる固定電話と携帯電話の割合の調整を行ったが、その理由は「前回の大統領選では誰を選びましたか?」という質問に対し、朴槿恵大統領を選んだと答えた人の割合が文在寅氏を選んだと答えた人の割合より非常に少なかったからだという。つまり大統領選投票では、朴51%、文48%を獲得したのでバランスが取れた標本ならほぼ半々が出るはずだが、現在の応答者の中には文候補を選んだと答える人の割合が非常に高く、調査方法を少し修正したという話だ。

 専門家の中には、応答率が高いとか低いとかいうことは品質に影響を及ぼさないとする人もいるが、やはり応答率が極端に低い世論調査は信頼性に欠けるのではないかという印象は拭えない。

 そして、もう一つ、世論調査の信用度というよりは、世論調査への不信感もある。通常、韓国の世論調査はマスコミが専門調査機関に依頼し、実施されるのだが、この時マスコミや調査機関が特定候補に不利であったり、有利になるような質問をして、自分たちが望む「数字」を意図的に作り出すことがあるというのだ。

 例えば、今年の3月に行われた、ある有名世論調査機関の調査結果は、一つの抽出枠(sampling frame)を複数の世論調査に繰り返し再利用したなど、公正さを欠いた方法で調査を実施し、また、被調査者の応答内容を応答者の意図とは異なった回答として分析したなどとして、中央選挙世論調査審議委員会から3000万ウォン(約300万円)の過料に処せられている。


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