2024年4月26日(金)

WEDGE REPORT

2017年5月16日

2.寛容さ(過去1カ月の間にチャリティ等に寄付をしたことがあるか)

 キリスト教徒やイスラム教徒や小乗仏教徒には寄付の習慣がある。教会に行くと寄付のための籠が回され、オフィスには時々何かの寄付の依頼が回ってくる。日本でいえば町内会費に近い感覚だ。カタールドーハの筆者の定宿はスーク・ワキーフといわれる地区にあった。ワキーフとは、「貧者への財産の寄進」を意味していた。また、ミャンマーでは、友人の若い女性は早朝に起きて、托鉢僧のためにご飯を作っていた。これは幸福度を高めるであろうが、ある意味義務でもある。寄付は、寛容さの国際比較の指標としては今一つ不適切である。

3.腐敗の認識(政府に腐敗が蔓延しているか)

 あまりに腐敗が蔓延すると、国民は不幸になるだろう。けれども政府の腐敗度が限りなく高いベネズエラで、知人運転手がこう言うのだった。「チャべスの文句をいうのは良くないよ。だってぼくらはチャべスのプロジェクトでチャべスのお金をもらっているのだから」

 ベネズエラのお金(国民の税金)であるのだが、大統領のものという認識なのである。このように道徳観は国によって全く違う。腐敗に頼って生活し、幸福になっている人間もたくさんいる。

 国連の幸福論は、世界の多様性を無視しているようだ。比較の項目を変えれば、順位は簡単に動く。カナダに留学していたコロンビアの友人は「寒い、友人や恋人もネットで見つけるしかない、面白くない、何もない、住みたくない」と忌み嫌っていた。

 国の所与の条件は不公平になるので入れたくないのだろうが、気候、天変地異、景観、そして食、治安、職場環境、恋愛、冒険などを比較項目とすれば、幸福度の表は様相が激変する。

 調査方法も気になる。1人当たりGDP、健康寿命以外の項目は、0~10の値を選ぶアンケートらしいのだが、悲観的か楽観的か見栄っ張りか控えめかなど、国民の気質により回答の振幅は大きい。

 結局誰のためのレポートかといえば、(筆者はコンサルタントなのでよくわかるが)毎年同じ形態の仕事ができるので、手離れがよく、関係する調査機関や大学などは、効率よく収益をあげることができるといえよう。だから、携わっている人や組織は、ある程度幸せになれる。


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