世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月19日

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 ベネズエラの民主主義の回復のために軍事的手段も排除しないというトランプ大統領の8月11日の発言は、この問題をめぐる地域の雰囲気を一変させるものでした。かねてより反政府運動の背後には米国帝国主義があると米国を非難していたマドゥロは、この発言で大変に元気付けられ、ベネズエラ国民に愛国者か米国の手先かどちらを選ぶのかと呼びかけ、急速に求心力を取り戻しています。これで、反政府派のみならず政権内部の批判派も動きにくくなっています。

 8月8日にはペルー外相のイニシアチブで、リマで外相会議が開催され、ベネズエラの制憲議会を認めず、人権侵害を非難する宣言を採択しました。この外相会議には域内17か国が参加し、域内においてベネズエラの民主化を求めるコンセンサスを形成しようとする地域的な努力として注目され歓迎されるものでしたが、トランプの発言はこのような努力をも害するものとなってしまいました。ペルー、コロンビア、ブラジルのみならず、ベネズエラの民主派もトランプの発言を非難する声明を出さざるを得なくなりました。

 8月13日からのペンス副大統領の南米諸国歴訪は、トランプ発言のダメージ・コントロールも目的でしたが、他のテーマも北朝鮮制裁や米国製品の市場アクセスの話など、副大統領の久しぶりの中南米訪問にしては、物足りない外交との印象ですが、理念のない「アメリカ・ファースト」のトランプ外交の下ではやむを得なかったのでしょう。

 それにしても、過去の米国の様々な干渉に対するアレルギー反応が強く残るラテンアメリカに対し、トランプ発言の無知と外交的センスのなさにはあきれるばかりですが、この地域においてアメリカ外交が失いつつあるものはあまりにも大きいものがあります。

  
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