定年バックパッカー海外放浪記

2017年11月12日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2016.6.18.~9.14 89日間 総費用18万2000円〈航空券含む〉)

世界の果ての日本人妻の唐揚げ定食

 7月16日。(承前)15時間のローカルバスでの大移動の果てに午後8時前に有名避暑地マナリーのバスターミナルに到着。マナリーは海抜2000m、クル渓谷北部に位置する。温泉で有名なヒンズー教寺院があるというのでマナリーから5キロ北にあるヴァシュシトまで豪雨の中を歩く。

レーのシーア派の回教寺院

 傘をさして合羽を着込んで暗闇の坂道を歩いてゆく。3キロほど歩いたところでヴァシュシトへ行く分岐点に来た。ここからは本格的山道で地図では2キロほどである。5分ほど山道を歩いていると丁度オートリキシャー(オートバイと人力車を組み合わせた乗り物)が来た。半額の90ルピー(≒160円)でOKというので便乗。

 ヴァシュシトは小さな温泉町という風情だ。早速お目当ての日本食堂に飛び込んだ。ガイドブックで「唐揚げ定食がおススメ」と書いてあったので昨夜から楽しみにしていたのだ。日本人の女将さんHさんの唐揚げ定食は評判通りで大満足。

 蛇足ではあるがHさんは某TV局の人気番組で世界の果ての日本人妻として紹介された由。

レーのスンニー派の回教寺院

インターネットが遮断?

 7月18日。朝飯後にゲストハウスで情報収集しようとトライしたがインターネットが繋がらない。西部のカシミール地方へ行くバスが政情不安により運行を停止していると噂で聞いたので確認したかった。

レーの郊外の丘の上に建立された日本山妙法寺の仏塔

 ゲストハウスのオーナーS氏(即ち女将のHさんの旦那)にインターネットの状況を確認すると「当局により北インド全体でインターネットが遮断されている可能性がある」とのこと。数日前にイスラム系住民とインド当局治安部隊の間で衝突が発生したとのこと。イスラム系住民が何かを要求してデモ行進したことがエスカレートしたもので武力衝突ではないとの説明。

日本人妻の亭主はカシミール出身のヒンズー教徒の真面目人間

ティクセーでダライラマ14世の講話(teaching)を聴く

 Hさんの旦那さんのS氏は1976年生まれの40歳。カシミール出身のヒンズー教徒。S氏は真面目で思慮深い御仁である。父親は兵士としてパキスタンとのカシミール紛争を戦った。S氏はビジネスの才覚があり屋上の食堂と階下のゲストハウスを経営している。食材は大半を現地調達しておりコメもカシミール米を使用している。インド各地のコメの味を比較して日本米に最も近い食味のカシミール米を採用した。またゲストハウスのホームページも日本語・英語で作成して頻繁に更新している。食堂もゲストハウスも日本人も多いが欧米人も半分近くを占めている。

レーの郊外のゴンパ(チベット仏教寺院)で座禅するニホンジン

印パ関係はインド人の最大の関心事

 S氏の家族はパキスタン国境に近い村に住んでいたので父親の代に親戚と一緒にマナリーに移住してきた。S氏はTVのニュース番組や政治討論番組を熱心に見ている。彼にとりカシミール問題は一族のルーツに係る最大の関心事である。

レーから下ラダック地方へ向かうバス(峠の軍の検問所)

 印パ関係は両国が敵対している側面だけが日本では報道されているが実際はもっと複雑なようだ。親戚や家族が相手国に住んでいて南北朝鮮のように国境で分断されている。両国関係が比較的安定しているときは相互訪問が可能となり国境を越えてバスの定期便が往来する。また印パ両国の国技であるクリケットもナショナルチームによる対抗戦も開催される。

されどパキスタンは不倶戴天の敵

 しかしながらS氏によると印パ両国が友好国となることは未来永劫有り得ないという。歴史的にパキスタン政府は両国の合意事項を容易に反故にしてきた。ヒンズー教徒は狂信的イスラム教徒とパキスタンに対して根源的な不信と憎悪を抱いている。

 インドは永遠にパキスタンを警戒しなければならない。そして印パ両国関係安定のためにはインドがパキスタンに対して圧倒的に強力な軍事力を保持することが唯一の方策であるとS氏は断言した。

カシミール問題、印パ知識人による公開TV討論会

 カシミールのインド支配地域でのイスラム系住民とインド治安組織との衝突事件についてTVで討論番組をやっていた。ちなみにインド当局は現地で厳戒態勢を敷き夜間外出禁止令や外部との一部交通遮断も実施していた。

 番組ではインド人専門家とパキスタン人専門家が現地語で討論している。インド人のヒンドゥー語とパキスタン人のウルドゥー語は言語的にはほとんど同じなので直接対話が可能なようだ。S氏の解説によるとインド側が元軍人と政治学者、パキスタン側が元外交官と新聞記者という四人が主なパネリスト。これに両国のTV司会者がそれぞれのスタジオから中継で討論を進めてゆく。

 四人ともに冷静で丁寧な議論を展開しており詳細な内容は理解できなかったが、少なくとも日本の国会の論戦よりは余程建設的かつ論理的な印象であった。印パ両国は相互に最大の仮想敵国として緊張状態にあり宗教的にも相容れない立場である。しかし少なくとも公開TV番組でカシミール問題を対等の立場で冷静に意見交換していることに驚いた。

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