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2017年12月17日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞元論説委員長

産經新聞元論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 トランプ米政権は年が明ければ、発足1周年を迎える。危うい〝低空飛行〟をみるにつけ、今後3年間の任期を全うできるのかと疑問を抱く人も多いだろう。批判を浴びる言動、政策もさることながら、行く手に立ちふさがるのは、〝ロシアゲート〟疑惑だ。元補佐官の訴追に加え、他の政権幹部の関与も取りざたされ、広がりこそすれ、収束する気配はみえない。ニクソン大統領が辞職に追い込まれた〝ウォーターゲート事件〟と比較する向きもあるが、政権を揺るがす深刻な問題ということでは共通している。ウォーターゲート事件では、〝ディープスロート〟と呼ばれた内部通報者の存在が大きな役割を果たしたことはよく知られている。ロシアゲート疑惑でも、内部通報者が登場して政府高官らの関与を明らかにするのか。そうなれば、トランプ政権に致命的な打撃を与えるのは必至だ。

(Ed-Ni-Photo/iStock)

ロシアの介入「プーチン大統領が指示」

 ロシアがサイバー攻撃によって不正に介入しているという疑念は、昨年の大統領選の期間中から指摘されていた。

 今年1月、米国家情報長官が公表した報告書によると、ロシアのプーチン大統領が直接指示し、これを受けて参謀本部情報総局(GRU)が主導した。民主党全国委員会(DNC)のコンピューターに侵入し、数万通ものメールを入手、内部告発サイト「ウィキリークス」を通じて暴露した。民主党のクリントン候補を不利な状況に陥れ、プーチン大統領に好意的なトランプ氏を当選させようというもくろみだった。

 事態を重視したオバマ前政権は任期切れ直前の昨年12月29日、この報復として、ロシア外交官の追放などを決めた。

 トランプ政権は年明け1月20日に発足したが、この間のFBI(連邦捜査局)の捜査で、新政権とロシア側との不明朗な関係が明るみに出た。あろうことか、オバマ政権が制裁を発動したその日に、大統領補佐官(国家安全保障担当)に就任予定だったマイケル・フリン氏が、ロシアの駐米大使と電話で協議、トランプ政権が発足すれば、制裁を見直すーなどを伝えていた。接触はこの時期に少なくとも2回あったという。

 フリン氏は当時就任前であり、権限を与えられていない民間人が外交交渉に関与することを禁じた法律に抵触する恐れがあった。「制裁について話し合ったかは確かではない」とフリン氏はあいまいな説明をしたが、就任1カ月足らずでホワイトハウスを去ることを余儀なくされた。
FBIが精力的に捜査を続ける中、5月になって突然、そのFBI のジェームズ・コミー長官が大統領によって解任された。大統領はコミー氏の能力、資質の問題と説明したが、ロシアゲートの捜査への圧力と受け止められたのは当然だった。

 時を同じくして、司法省がミュラー元FBI 長官を特別検察官に任命し、捜査に拍車がかかった。ミュラー検察官は、12月はじめ、フリン氏を虚偽の供述をした罪で起訴するまでにこぎつけた。FBIに対して当初、ロシアと接触した際、制裁問題には触れなかったとうその供述をしたことが起訴事実だった。

疑惑の核心は大統領の関与の有無

 フリン氏は起訴事実を認めたうえで、「真相を明らかにするために検察官に協力する」とのコメントを発表、自らの罪の軽減をはかるために、洗いざらい供述する可能性がある。フリン氏とロシアの接触に政権の上層部、端的に言えば大統領が関与していたかどうかが核心だが、トランプ氏は全面否定の構えを崩していない。

 しかし、フリン氏にロシアとの接触を指示した人物については、大統領の娘婿、クシュナー上級顧問だったという報道もなされているから、トランプ氏も枕を高くして眠ってはいられない。

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