2024年4月27日(土)

ちょっと寄り道うまいもの

2010年12月24日

 もとより、高額なお店の美味しさではない。豚三枚肉のように、カキもお好み焼きの主役を立派に務め上げるものだということを納得させる楽しさ。生ガキやカキフライ、土手鍋等々と同じく、これもありという楽しい発見。たっぷりのカキに贅沢な気分を味わいつつ、一〇〇〇円でおつりが来て、得をした気分。満足。和さん、参りました。

 そういえば、近くにはもう一軒、彼に教えてもらったところがある。ここまで来たら、寄らないわけにはいかない。

山本旅館では、瀬戸内海産の魚介や地酒が備前焼で供される。これぞ、本当の贅沢!

 山本旅館。これもいわゆる高級旅館ではない。昭和の匂いがそのまま残る、何気ない旅館である。ただ、藤原啓ゆかりの場所。

酔い痴〔し〕れてうちの女房か人妻か
分からぬ時の如何〔いか〕に楽しき

そんな、啓による書が多数、残っている。それだけで、愛すべき人となりが知れる。その人がいた場所で同じことをする喜び。

 また、この宿は啓をはじめとする土地の大家の作品を多数持っている。酒を頼んで出てくるぐい飲みも、大家の作品。

 啓が医者に飲み過ぎを諭され、「一杯だけにしなさい」と言われ、ならばと作った大ぶりのぐい飲みが登場するかもしれない。

 そして、料理。土地の食材をふんだんに素直に使ったものが登場する。見事な備前の大皿に盛られたアナゴのしゃぶしゃぶは、夏場の名物。そして、冬場は当然、カキが主役だ。生ガキに始まり、鍋等々の定番的美味をこれでもか、という至福。

 明日は藤原啓記念館でお気に入りのあの作品と再会して帰るか。伊部駅近辺のギャラリーで若い作家のものを見るか。ともあれ、まだ我が女房は他人様の妻には見えぬ。カキを肴に、もう少しだけ酔い痴れて……。

■ほり
赤穂線日生駅から徒歩約15分
岡山県備前市日生町日生886-5 ☎0869(72)0045
営業時間/10時30分~19時30分
定休日/水曜
■山本旅館
赤穂線西片上駅から車で約10分
岡山県備前市穂浪3411 ☎0869(67)0124

◆ 「ひととき」2011年1月号より

 

 

 

 

   

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