中東を読み解く

2018年4月11日

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影の戦争激化の懸念

 ただ1点、分からないのは、戦況的に反体制派を圧倒していた東グータ地区の制圧作戦で、あえて化学兵器を使わなければならなかった理由だ。ロシアはこれをもって、アサド政権には化学兵器を使用する根拠がないと否定し、米国の軍事介入を画策する過激派が仕組んだもの、と反発している。

 だが、トランプ氏の言動はまた、シリアをめぐる「影の戦争」を激化させかねない。その主役はイスラエルとイランだ。ロシア軍の発表によると、イスラエル軍機は9日未明、シリア中部パルミラ近くのシリア軍基地T4に対し、レバノン領空から空対地ミサイル8発を撃ち込んだ。5発はシリアの防空システムにより破壊されたが、3発が着弾、14人が死亡した。

 ベイルートからの報道などによると、死者の中にイラン人4人が含まれていた。イランは2011年の内戦勃発直後からアサド政権を支援してきており、現在、軍事顧問団として革命防衛隊約1000人と、レバノンのヒズボラなど配下のシーア派民兵軍団約2万人をシリアに送り込んでいる。

 4人のイラン人の中には、シリアにおける無人機作戦の責任者である革命防衛隊の大佐が含まれていたという。イスラエルはT4への攻撃について、確認も否定もしていない。しかし、イスラエルの攻撃がトランプ氏の軍事攻撃を示唆した発言に触発されたものであるのは事実だろう。

 米紙がイスラエルの元空軍司令官の発言として報じるところによると、イスラエルは2012年以降、約100回にわたってシリア国内の標的を攻撃してきた。主に標的になったのは、ヒズボラへの武器・弾薬を運ぶ輸送トラックの車列だ。イスラエルはイランのシリアにおける軍事拠点化と、イランからヒズボラへ渡る武器やミサイル部品に警戒している。

 こうしたイスラエルの攻撃は「影の戦争」として発表されることはなかった。この2月、イランの無人機がイスラエルの領空を侵犯、この報復にシリアのイラン軍基地攻撃に出たイスラエル軍機が撃墜される事態に発展、両者の緊張が続いていた。イランやヒズボラが今後、今回のイスラエル軍機の攻撃に対して報復に出る可能性もあり、シリアを舞台にしたイスラエルとイランという宿敵同士のつばぜり合いが激化するのは必至だ。

  
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