海野素央の Love Trumps Hate

2018年9月3日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

争点の「再構成」とは

 オマロサ氏は、「トランプ大統領は争点を再構成する」と言うのです。それはどのような意味なのでしょうか。

 簡単に言えば、争点をすり替えて別の言い方で表現するということです。例えば、アフリカ系米国人に対する警察の暴力に抗議するために、プロフットボールリーグ(NFL)の選手たちが、試合前の国家演奏中に膝を地面につく行為です。彼らは人種差別を争点にしているのですが、トランプ大統領は国家や星条旗に敬意を払っていないと主張して、争点を「愛国心の欠如」にすり替えています。

 もう一つ例を挙げてみましょう。西アフリカのニジェールで17年10月、過激派の襲撃を受けて死亡したラ・デイビッド・ジョンソン軍曹の遺族に、トランプ大統領は哀悼の意を伝える電話を入れました。ジョンソン軍曹の妻が車内でトランプ氏からの電話を受け取った際、フレデリカ・ウィルソン下院議員(民主党・フロリダ州第24選挙区選出)がその場にいました。

 ウィルソン議員は、トランプ大統領がジョンソン軍曹の妻に、「本人は入隊がどういうことか分かっていたはずだ」と極めて無神経な発言したと言うのです。しかも、同議員はトランプ氏がジョンソン軍曹の名前を覚えていなかったと語ったのです。

 争点はトランプ大統領の「無神経さ」でした。ところがトランプ氏は、同氏とジョンソン軍曹の妻の会話を聞いたウィルソン議員の「倫理観のなさ」に争点をすり替えたのです。

 結局、オマロサ氏の観察が正確であるならば、トランプ大統領は感情移入の能力が低い無神経な大統領ということになります。トランプ氏が6月のホワイトハウスでの会談で安倍晋三首相に、「私は真珠湾攻撃を忘れていないぞ」と語ったとしても、まったく不思議ではありません。

  
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