今回のテーマは「トランプ対オマロサ」です。ドナルド・トランプ米大統領とオマロサ・マニゴールト・ニューマン元大統領補佐官(以下オマロサ)の関係は、正にメンターとプロテジェでした。メンターとは人生経験が豊かでキャリア上の心理的あるいは社会的な支援をしてくれる「師」を指します。メンターから体験談や専門的なアドバイス及びアイデアを受ける「被支援者」がプロテジェです。
オマロサ氏は、トランプ大統領が司会を務めていた米NBCテレビのリアリティ番組「アプレンティス(徒弟)」に出演して、同大統領との関係を築きました。それ以来、約15年間にわたりトランプ大統領をメンターとして敬意を払ってきたと述べています。ところが、オマロサ氏は昨年12月、ジョン・ケリー大統領首席補佐官によって突然解雇されました。
本稿では、ホワイトハウスのインサイダーであったオマロサ氏が観察したトランプ大統領を紹介します。
錯乱したトランプ
ホワイトハウスで唯一アフリカ系女性の上級アドバイザーであったオマロサ氏は8月、回顧録『Unhinged(錯乱した人)』を出版しました。同氏は米メディアのインタビューの中で、本のタイトルはトランプ大統領を指していると語りました。
本書でトランプ大統領について「嘘をついたり自画自賛するのはいつも自分をよく見せるためだ」「オバマ元大統領のレガシー(政治的遺産)を潰したがっている」「精神状態が衰退している」「Nワード(Nはニガー)を使っていた」と、オマロサ氏は述べています。Nワードはアフリカ系米国人を侮辱する人種差別用語です。このあたりは、ホワイトハウスのインサイダーでなくても予想可能ですが、次のエピソードはインサイダーのオマロサ氏でなければ語ることができません。
口の中に入れたメモ?
米国では1978年に制定された大統領記録法により、大統領が触れた文書は私物ではなく、「公文書」とみなされます。オマロサ氏によれば、トランプ大統領はトランプ・オーガニゼーションの時代からメモを破る癖があります。そこでホワイトハウスのスタッフは大統領記録法を遵守し公文書として残すために、トランプ氏が破いたメモをセロテープでとめなければなりません。
オマロサ氏はトランプ大統領が執務室で個人弁護士のマイケル・コーエン氏(現在は被告)と面会した後、同大統領がメモを口の中に入れたのを見たというのです。細菌に恐怖症を持っているのにもかかわらず、トランプ氏が本当にこのような行動をとったならば、メモはかなり不都合なものであったといえます。いずれにしても、米連邦捜査局(FBI)のロバート・モラー特別検察官は、ここに注目したことは間違いありません。