今回のテーマは「懐疑心と恐怖心」です。ドナルド・トランプ米大統領は秋の中間選挙のギアを上げ、重点州で支持者を集めた集会を開いて共和党候補の応援演説を行っています。それらの集会で、熱狂的なトランプ支持者の中に不吉な動きをみることができます。本稿では、支持者の新たな運動を紹介しながら、トランプ氏のゲームのやり方を分析をします。
「Q」の登場
フロリダ州(現地時間7月31日)及びペンシルバニア州(同8月2日)で行われたトランプ支持者を集めた集会に、「我々はQだ」という字句が入ったTシャツを着用した支持者が登場しました。「Q」という文字が印刷されたポスターを掲げて、トランプ大統領を応援する支持者もいました。一体「Q」は何を意味しているのでしょうか。
「Q」とは、投稿サイト「4chan」及び「8chan」に昨年10月から投稿を続けている匿名の人物「Qアノン」を指しています。「Qアノン」は、米政府内の敵対的な力に対抗して、彼らから国家及びトランプ大統領を守るために投稿を行っています。
「Qアノン」は電文のような簡潔な投稿をします。例えば、
「ホワイトハウスの中は混乱していない。トランプの意図通りうまくやっている」
「トランプはすべてを完全にコントロールしている」
「モラー(特別検察官)とトランプは、ヒラリー、ビル(クリントン)、オバマを逮捕するために一緒に働いている」
などです。これらの投稿内容は「ニッチな極右カルトによる陰謀論」とみられています。従って、「Qアノン」は親トランプの陰謀論者といえるかもしれません。一方で、Qフォロアーは親トランプで、キリスト教右派、反リベラルで、しかも、だまされやすい人々といわれています。
トランプは陰謀論者か?
「Qアノン」は、トランプ政権内のインサイダーという見方が有力ですが、実はトランプ大統領ではないかという憶測を呼んでいます。その一方で、プーチン露大統領という指摘もあります。
「Qアノン」が誰であれ、トランプ大統領は陰謀論者と見られても仕方のない発言をしてきました。それらはまったく根拠がない発言なのですが、人々を混乱させ、懐疑的な見方をさせる効果は確かにあります。
例えば、過去にトランプ大統領は「オバマはアフリカで生まれた」と主張して、オバマ氏の大統領の資格について懐疑的な見解を示しました。さらに、「オバマがトランプタワーを盗聴させた」と何も証拠を示さずに述べて、オバマ政権がトランプ陣営に陰謀や策略を企てていた印象を国民に与えました。
16年の共和党候補指名争いの最中にもトランプ大統領は、ライバルのテッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)に関して、「クルーズの父親は、ケネディ大統領の暗殺に絡んでいた」と、同議員の父親がケネディ元大統領暗殺の陰謀を企てたかのような口調で語りました。
本選では、ヒラリー・クリントン元国務長官の得票がトランプ氏のそれを上回ると、「300万人の不法移民がヒラリーに投票した」と、こちらも検証をぜずに反論しました。まるでクリントン陣営が不法移民を利用して、ひそかに悪事を企んでいたかのような誤った印象を与えたのです。