2022年8月8日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2018年8月9日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

トランプの陰謀論的な思考様式

 現在でもトランプ大統領は陰謀論を利用しています。まず、周知の通り、自分に不都合なニュースを「フェイク(偽)ニュース」と呼んで封じ込めようとしています。主要メディアの報道にはトランプ氏を貶める意図があるとして、支持者にそれを信じ込ませているのです。

 次に、トランプ大統領はモラー特別検察官のロシア疑惑の捜査に関しても疑惑捜査を「魔女狩り」と呼び、ここでも同検察官が率いるチームが陰謀を企てているという印象づけを行っています。そうすることで、捜査に関して支持者に懐疑的な見方をさせるのです。

 さらに、トランプ大統領はロシア疑惑そのものを「でっち上げ」と繰り返し述べて、疑惑の完全否定をしています。有権者の見えないところで、トランプ陣営とロシア政府が結託して、16年の米大統領選挙でクリントン元国務長官を倒したという疑惑を払拭する狙いがあります。仮にトランプ陣営とロシア政府の共謀が事実であれば、不都合な事実を「でっち上げ」として扱い、隠蔽するトランプ氏の意図があるといえます。

 陰謀や策略は、トランプ大統領にとってゲームに勝利するための効果的なやり方なのでしょう。同大統領が陰謀論的な思考様式を備えている点は看過できません。

移民政策と支持率

 陰謀や策略を使って支持者に「懐疑心」を持たせるやり方に加えて、トランプ大統領がゲームで勝利を収めるために用いているのが「恐怖心」です。秋の中間選挙で、トランプ大統領は移民政策を民主党に勝てる争点と位置付けており、同政策と恐怖心を結びつける戦略に出ています。

 その背景には、トランプ大統領の移民政策に対する共和党支持者の高い支持率があります。世論調査で定評のあるクイニピアック大学(米東部コネチカット州)の調査(18年6月27―7月1日実施)をみてみましょう。

 同世論調査によれば、80%の共和党支持者がトランプ大統領の移民政策を支持しています。「一般に不法移民は米国民よりも犯罪を犯すと思いますか?」という質問に対して、90%の民主党支持者が「そうは思わない」と回答しました。ところが、共和党支持者になると45%が「そう思う」と答えています。

 「トランプ大統領の移民政策の動機は誠実さからですか、それとも人種差別的信念からですか」という質問に関しては、80%の民主党支持者が「人種差別的信念」、90%の共和党支持者が「誠実さ」と回答しました。つまり、共和党支持者はトランプ大統領の移民政策に極めて好意的なのです。

 そこでトランプ大統領は、移民政策は支持基盤を固めるのにかなり有効な道具であると読んでいるフシがあります。では、どのようにして、支持層を固めようとしているのでしょうか。

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