したたか者の流儀

2018年10月11日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

英語の書類には、一切判子は押せないのです

 東京都は東京金融特区を標榜しているので、住民票の英語版とか、事務所長のサインをもらえないか試してみた。昨今、区役所の窓口は派遣会社のスタッフなので極めて親切だが、定時定形以外は判断を許されない。そこで、職員が登場する。

 ここに、サインしてスタンプを押してくれぬかと問うた。

 役人曰く

 「それは、できかねます」

 「では、何が出きるか教えてください。やたらな書類に判子を押してくれといっているのではないんです。ベルギー政府の書類にたった一行スタンプ印とサインをお願いしたいだけです」

 と、私。

 「英語の書類には、一切判子は押せないのです」

 と、お役人さん。

 「では、どのように国際金融特区にするのでしょう。Mr Yam is still alive の下にサインしてくれればいいのです」

 と、私は粘った。

 「区役所の英語のゴム印を押してほしいのです。僕が生きているのは歴然としてますよね。ALIVEの意味もわかりますよね。」

 と、私は続けた。

 「重々わかりますが地方自治法で……」

 と、お役人さん。

 「わかりました、では区会議員に議会で聞いてもらうので、いつ議会が始まるか教えてください」

 と、私が言うと

 「区議会ですか。開催時期はちょっとわかりません……いま不在ですが部長が知っているかもしれません」

 「地方自治の最高機関は区議会でしょう」

 「……」

 ベルギー時代の友人たちはみんな同じ経験をしているようだ。年金金額が多い仲間は、複雑方式で生存証明を取得している。月間1万円組は、泣き寝入りをするか、レミーマルタン方式は躊躇しながら、もう一つの究極の奥の手で乗り切るか迷っていると聞く。

 断じて英語を国語として認めてほしいといっているのではない。こんな状態で、国際金融特区なんてできるのだろうか、心配になってしまう。

  
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