世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年10月10日

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 イランのロウハニ大統領は、同じ国連総会の演説で、トランプが対イラン制裁を呼びかけたことに対し「各国に法を破るよう求めるのは国連史上初めてのことだ」と強く反発した。ロウハニの指摘は的を射ている。イラン核合意は、安保委常任理事国5か国にドイツを加えた「P5+1」とイランとの間で合意され、安保理で承認され、安保理決議2231によりその履行が国連加盟国に求められている。つまり、イラン核合意は国際規範ということになる。トランプ政権の振る舞いは、国際法規に反していると言わざるを得ない。

 イランにとって心強いのは、米国を除くイラン核合意当事国が声明を発表し、イラン核合意の支持の継続を表明するとともに、イランとの経済関係の維持を明らかにしたことである。すなわち、イランとの金融取引を促進し、イランと取引をする企業を米国の制裁から護ると述べた。具体的には、イラン産原油の購入をドル以外の通貨で行うなどの策が考えられているらしい。

 しかし、このような対策が有効かどうかは疑問である。既にイランの原油輸出は急速に減っている。制裁が発効すれば、イランから原油を買う企業、は米国の市場と米国の金融システムから排除されることになるから、それを嫌ってのことである。

 米国経済の相対的地位は低下したとはいえ、世界の金融市場では依然としてドルが圧倒的な地位を占めており、ドル取引ができなくなると、世界でビジネスができなくなる。それは企業にとり致命傷であるから、イラン原油の購入は控えざるを得なくなる。日本企業もすでにイラン産原油の輸入を控えるとしている。比較的中立と思われるインドですらイラン産原油は買わなくなるようである。

 そうなると、イランにとって頼りになる主要国は中国とロシアである。しかし中国とロシアだけでは、これまでのイラン産原油に対する需要を補うことはできないだろう。イランは2017 年に原油の輸出で500億ドルの外貨収入を得た。これはイランの輸出全体の70%を占めた。この原油の輸出が大幅に減ると、すでに困難な状況にあるイラン経済にさらなる打撃となる。イラン産原油の購入に加えて、イランでのビジネスも制裁の対象となる。すでにイランでの石油・天然ガス関連事業から、仏のトタル社はじめ欧州の主要企業が撤退を決めた。

 トランプ政権による制裁はイラン経済を弱体化させ、イラン国民の生活をさらに困難なものにする。それが、イラン政権の崩壊(トランプ政権はこれを望んでいる)につながることはないだろうが、イランの足腰を弱めることは確かで、イランの中東政策にも影響を及ぼし得る。よく注視する必要がある。

  
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