世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年11月7日

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 10月18~19日に開催されたアジア欧州会議(ASEM)の首脳会議と関連会合で、EUはアジアとの「連結性」の強化という表現をキーワードとして、アジア重視、いわば「アジアへの軸足移動」を明確に示した。

(AlexYustus/Bismillah_bd/iStock)

 今回のASEMに先立ち、9月19日にはEUの外交・安保政策上級代表部は‘Connecting Europe and Asia - Building blocks for an EU Strategy’(欧州とアジアの連結―EUの戦略の基礎的要素)と題する戦略文書(以下「戦略」)を提案、10月15日にEU外相理事会がこれを採択した。採択に際し、理事会は‘Council conclusions on connecting Europe and Asia– Building blocks for an EU strategy’という結論文書(以下「10月15日文書」)を出している。ここでは、「戦略」と「10月15日文書」を参考に、欧州の経済面でのアジア戦略のコンセプトや動向を見てみる。

 「戦略」によれば、欧州型の連結性とは、持続可能、包括的、ルールに則った連結性である。持続可能な連結性は、市場の効率と財政的実現可能性を確保し、気候変動や環境破壊に対応することを意味する。そのために、高水準の透明性と良い統治が必要であるとしている。包括的な連結性というのは、陸海空の交通ネットワーク、インターネットから衛星に至るデジタルネットワーク、LNG、電力網、再生可能エネルギーの効率化に至るエネルギーのネットワークを含む。ルールに則ることについては「ルールと規制は、ヒト、モノ、サービス、資本が効率的、公平、円滑に移動するのに不可欠である」としている。

 「戦略」と「10月15日文書」は、以上を踏まえ、交通網の連結、共通の基準やインフラ整備を含むデジタルネットワークの連結、再生可能エネルギーを中心とするエネルギー網の連結、人的交流、二国間協力、多国間協力、国際協力を打ち出している。そして、国際機関と連携したインフラ投資を目指すとしている。

 欧州のアジア戦略は、市場の効率性、透明性、国際的ルールの遵守を強く謳っている。中国による一帯一路をはじめとする対外経済戦略のあり方とは対照的である。中国は「債務の罠」の懸念を作り出し、環境破壊もあまり意に介していない。中国のなりふり構わない姿勢に警戒を感じ始めた欧州が、対中牽制に乗り出したという側面は当然あるであろう。ただし、中国を敵視するとか排除するとか言うわけではない。

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