この熱き人々

2018年12月25日

»著者プロフィール
閉じる

吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 そんなひたすら一生懸命の時期、大きなイベントの記念品として600個のフラワーギフトのコンペに参加することになった。会場は狭くて置く場所がないので、積み重ねて置けるもの、しかも生花でというリクエスト。花束でもアレンジメントでも、積み重ねるには大きな箱が必要だ。悩んでいるうちに、それなら直接箱に花を詰めたらどうだろうとひらめいたのだという。

 コンペには負けたようだが、高いハードルに苦しみながら生み出された花の宝石箱のようなフラワーボックスは、商品として自分の店に並ぶことになり、骨董通りを行き来する目の肥えた人々の足を止めさせ、雑誌に紹介され、日本中に驚きのギフトが浸透していく。

花で驚きをもたらす

 そこからは、堰(せき)を切ったようにニコライのセンスと才能を求める人々が集まってきて、翌年には「ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン」のブランドを立ち上げると同時に有楽町に最初の店をオープン。次々と生み出されるサプライズを盛り込んだフラワーギフトはもちろん、ホテルやイベントホールのディスプレイ、行政や企業との共同企画、ウエディングの企画、インテリアデザインやファッションにも参画するなど、とどまることなく活躍の場は広がり続けているのである。

 なぜ日本でニコライはこれほど求められ、愛されているのだろうか。

 「デンマークは人口500万人の小さな国で、のんびり生活を楽しんでいます。日本は満員電車で長い時間かけて通勤したり、忙しかったりしますが、人の気持ちを考えるやさしさと繊細な感性があります。デンマークと日本が、僕を通してちょうどよく溶け合っているのかもしれません」

 

 日本の、とりわけ都会の24時間フル回転のような慌ただしさは、北欧のゆったりした時の流れとは対極だったはず。日本人が辟易しながらも止められない忙しさに、ニコライは抵抗なく身を置き、むしろ面白がっているように見える。

 「どうも僕は日本のハイスピードが大好きみたいです。デンマークはすっごく好きだけれど、2週間滞在しても同じ人としか会わないし、あまりに同じことばかりなので、日本の忙しさと刺激が恋しくなってしまいます」

 知らないもの、新しいものに出会うのが大好きだという。生活や文化の違いだけでなく、花の世界でも日本には華道というものがある。自分の好きな花を自分のセンスで自由に飾ることを存分に楽しんできたニコライの目に華道はどう映ったのか。ちょっと聞いてみたくなる。

関連記事

新着記事

»もっと見る