世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年1月8日

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 イエメン内戦は、2015年1月にホーシ派勢力がハーディ暫定政権に対しクーデターを起こし首都サナを掌握したのに対し、サウジ主導の軍事有志連合がホーシ派勢力を鎮圧しようとして始まった。ホーシはイランの代理勢力であるから、内戦は、サウジとイランの代理戦争といえる。内戦は、1万人の死者を出し、数百万人を飢餓に追い込むなど、今や「世界最悪の人道危機」と呼ばれるほどの深刻な事態に陥っている。早期終結が望まれている。

(AlionaManakova/MiroNovak/vanbeets/iStock)

 こうした中、12月13日に、国連の仲介で行われていた和平協議が終了し、国連のグデレス事務総長は、イエメン西部の港湾都市ホデイダ等における停戦で合意したと発表した。ホデイダ港は、イエメンで最重要の港であり、食料、燃料その他の輸入の8割以上が通過する。今回の合意の下で、ホーシはホデイダ市街と3つの港から撤退することに合意した。国連は停戦を監視し、撤退部隊の市外への移動を統括する「再展開調整委員会」の議長を務める。また紛争当事者は、南西部タイズでの緊張緩和、港湾収入の中央銀行への払い込み、捕虜交換合意の実施に関する共同委員会を国連主宰の下に設置することに合意した。合意は12月17日に発効した。国連安全保障理事会は12月21日、この停戦を承認・歓迎し全当事者に合意の遵守を求めるとともに、停戦監視のための先遣隊を派遣する決議を、全会一致で可決した。

 ただ、多くの人が指摘するように、合意が順守され、問題が解決に向かうのかどうかは分からない。停戦合意発効の翌日には武力衝突が起きたとの報道もある。しかし、今回は国連事務総長まで関与しており、停戦監視、未解決の問題解決のため、国連が主導していくことが期待される。人道危機になっていることも考えれば、イエメン紛争は国連の関与が不可欠である。上記安保理決議は、国連の関与を示すものであり歓迎できる。

 Foreign Policy誌外交担当上席記者のColum Lynchは、12月13日付けで同紙ウェブサイトに掲載された記事‘Is Yemen’s Torment Finally Ending?’で、今回合意について、ホーシ側により大きい妥協が要求されていること、サウジ側は和平と軍事の二面作戦で夏から軍事攻勢をかけておりその戦略が功を奏したのかもしれない点を指摘する。それは興味深い指摘であり、今回合意の脆弱性もそこにあるのかもしれない。ホデイダ撤退はホーシにとっては大きな妥協であろう。更に、ホーシを支援するイランが今回の和平協議で如何なる役割を果たしたのか分からない。気になることである。

 米上院は12月13日、カショギ殺害事件についてサウジのムハンマド皇太子を非難する決議とイエメン紛争に関する米国のサウジに対する軍事的支援の停止を求める決議を採択した。前者は全会一致、後者は賛成56反対41(共和党の一部も造反して賛成)で採択された。これらは下院では採択されないかもしれないが、それでも大きな意味を持つ。イエメン停戦に向けて圧力となるであろう。トランプ側近に転じているグラハム議員もサウジには厳しい立場を表明している。トランプにとっても痛いことだったのではないか。米国がサウジ支援を止めれば今のイエメン紛争は止まる。サウジも閉塞する今の状況を転換するために、先の見えない紛争を適切な形で終結することを考えることが利益ではないかと思われる。

  
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