立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年4月30日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

 4月、「働き方改革」の取材で北海道を訪れた。直行便で片道8時間、北緯43度の札幌。赤道直下に住む私にとって、決して近い場所とはいえない。せっかくの遠出でなるべく効率よく仕事をしたい。昼間の仕事以外に夜も食事を兼ねて取材のアポを入れた。

幻の鹿一頭喰い

 札幌出張2日目の夜、「鹿一頭喰い」のハンター直営・鹿肉ジンギスカン店「とりこ」へ向かう。繁華街すすきの、南6条西4丁目の角、温泉スパのサフロを目印に東に入って50mのところ、本当に目立たない店である。しかも、小さい。カウンターの7席だけ。

 早速、鹿肉一頭喰いコースがスタート。まずは仔鹿のサーロイン刺身。ルイべで出してくれるかと思ったら、普通の刺身でまったく臭みはない。ジビエの刺身というのはやはり贅沢だ。続いて鹿レバー、タン、ハツ、ヒレ、サーロイン、内ももへと続く。最後に出されるのは、12日間熟成させた鹿肉。「肉は腐りかけが旨い」と言われるが、ジビエもその通り、熟成肉が旨い。

とりこ-仔鹿のサーロイン刺身(写真:筆者提供)
とりこ-鹿レバー(写真:筆者提供)
とりこ-熟成鹿肉(写真:筆者提供)

 食用のエゾ鹿はすべて2歳以下の仔鹿を使っている。まったく臭みがない。それ以上年を取ると、発情期を迎えた鹿にはフェロモンや加齢臭が発生するからだ。ハンターは鹿の(推定)年齢を確認しながら、獲物を仕留めるわけだ。店主の相馬裕昭氏はハンター2代目、猟に関してかなり詳しい。食べながら根掘り葉掘り質問攻めで、臨場感満点の狩猟話を聞かせてもらった。

とりこ-店主の相馬氏が肉を焼いてくれる(写真:筆者提供)

 完璧に近い鹿肉一頭喰いのフルコースだった。唯一気になるのは店名に使われている「鹿肉ジンギスカン」という名称。実際に出された品々はかなり高級感があり、これは「ジンギスカン」と称していいのか。以前知床の旅行中に、エゾ鹿のカレーを800円程度で食べさせてくれるレストランがあってびっくりした。鹿肉はこんな安いのかと店員に聞くと、繁殖し過ぎたエゾ鹿は作物を食い潰す害獣だから、安くしてでもどんどん食べてほしいと教えてくれた。正直といえば正直だが、ビジネスとしてはもう少し売り方を考えてもいいのではないかと感じた。

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