世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年5月20日

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 4月24日の英デイリー・テレグラフ紙は、4月23日のメイ首相が主宰する国家安全保障会議(National Security Council)が5Gネットワークの非中核部分(noncore)にHuaweiの参入を認める決定をしたと報道した。国家安全保障会議の模様が同紙に漏洩したものである。このデイリー・テレグラフの報道によれば、内相、外相、国防相、国際貿易相、開発相が反対したとされている。未だ決定の正式発表はないが、恐らくそのような決定が行われたのであろう。メイ首相は質問に答えて、「リークにはコメントしないが、通信ネットワークの安全には高度の優先度を付している。我々は通信ネットワークの強靭性と高度のサイバー・セキュリティーを確保したいが、サプライヤーの多様性も確保したい」と述べている。
(註)国家安全保障会議の決定が漏洩したことは重大視され、犯人捜しが行われていたが、5 月1日、メイ首相はウィリアムソン国防相を解任した。ウィリアムソンは漏洩への関与と責任を否定している。

(BonneChance/iStock)

 4月23日の上記決定に関して、4月27日付の英エコノミスト誌は、国家安全保障会議の決定は思慮深いものだとして支持する論説を掲載している。が、この論説には賛成し難い。国家安全保障会議の決定を無理して正当化する理屈を探したという印象を免れない。

 まず、英国における既存の4Gネットワークに存在するHuaweiの機器の安全性を、2014年以来継続的に監視して来た国立サイバー・セキュリティー・センター(National Cyber Security Center)が3月28日に公表した報告との乖離があるように思われる。この報告は Huawei の機器に「バックドア」が作られるなどスパイ行為が行われていると言っている訳ではない。Huawei には懸念があるため、安全性を検証し報告したものであるが、従来 Huawei に対して指摘して来た問題と、それへのHuaweiの対応振りを評価した上で、「現在英国に展開されているHuaweiの機器の長期の安全上のリスクを管理し得るかについては限定的な保証を与え得るに過ぎない」と述べて、その信頼性に疑問を提起している。5Gの展開を前にした深刻な問題提起と受け取るべきではないかと思われる。

 Huaweiを排除したところで敵対的な政府のサイバー攻撃のリスクを除去することには余り役立たない、という理屈がHuaweiを容認して構わない理由になるとは思えない。エコノミスト誌の論説が言う地政学的なリスクの意味も良く判らない。Huaweiを排除することは世界を2つの陣営に分断し、貿易体制を分断して貿易戦争を激化させるということらしいが、どれ程のことか判らない。むしろ重要なことは、Huaweiに対抗出来る性能と価格の機器を開発することにあるであろう。

 昨年、中国の資金援助で中国企業によって建設されたアフリカ連合本部の建物(在アディスアベバ)に中国によって設置されたHuaweiのサーバーから毎晩機微なデータが中国に送られていたことが発覚したとされている。おまけに壁の中に盗聴器も仕込まれていた。アフリカ連合はサーバーを取り換えることを余儀なくされたという。

 危ういことには近付かないことが賢明である。事は将来死活的に重要なインフラとなる 5G通信ネットワークなのだから尚更のことである。英国は中核となる部分にはHuaweiを採用しない方針のようであるが、そのことで安全性は確保されるのか。ある種の防護措置を講ずれば大丈夫という専門家の意見もあるようであるが、そこまでしてHuaweiを使う必要もないであろう。エコノミスト誌は別の記事で、5Gでは機微なデータ処理がますます周辺(中核でない部分)近くで行われると指摘している。豪州は既にHuaweiを使用禁止とすることを決定しているが、豪州の前首相マルコム・ターンブルは、5Gについては中核と周辺の危険性の区別はなしえないと警告している。
 

  
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