2024年4月26日(金)

故郷のメディアはいま

2012年7月11日

 そして沖縄の本土復帰とともにOHKはNHK沖縄放送局に改組され、NHKの総合・教育のテレビ2波、AMラジオ2波が県内に流れ始めた。同時に各家庭・各事業所からの受信料徴収も始まった。

 だが、受信料徴収はおろか受信契約さえままならなかった。県内にNHKの番組はスポンサーつき・無料で視聴・聴取できるとの習慣が浸透していたからである。「昨日まではタダで見られたのに、なぜ急に『受信料を払え!』と言うのか」というわけだ。

 受信契約の増加・受信料徴収の拡大は思うように進まない。そこでNHKは思い切った策に出る。91年7月、沖縄放送局の局長に地元のビール会社・オリオンビール副社長の比嘉良雄を起用したのである。現場の放送局長への民間登用は、全国で始めての試みだった。

受信料徴収の苦労

 沖縄出身の、沖縄企業経営幹部による、県民への「あなたが支える公共放送」意識の醸成作戦は、十分な成果が上がったとはいえなかった。何せ県や市町村の自治体職員、学校の先生、自治会長、郵便局職員など、本土では真っ先に受信料を払っている世帯が「隣も払っていないのに…」と支払いを躊躇するのだから。

 NHKでは、沖縄の受信料を地上・衛星とも本土より月額およそ150円安く設定し収納率アップを図っているが、2011年度末で県内全世帯の3分の1強が支払っていない。比嘉局長時代は、3分の2以上が受信料の支払いを拒否していたことを思えば着実に進捗しているといえるが、それにしてもだ。

 これは中世の琉球王朝が、ヤマト(本土)だけではなく中国や朝鮮半島、さらには東南アジアなどとの「大交易時代」を経験し、「多国籍文化の交差点」の役割を果たしていた沖縄独特の風土。「てーげーなんくるないさー(まぁなんとかなるさ)」的な暮らしぶりも関わっているのかもしれない。

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