2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2012年7月20日

スー・チー氏への期待と不安
異様な新首都ネピドー

ヤンゴン市内の露天で売られているアウン・サン・スー・チー氏のTシャツ

 ヤンゴン市内では、露店でお土産用にアウン・サン・スー・チー氏のTシャツが堂々と売られているのが目に入った。かつては自宅軟禁されていた民主化リーダーを称えるような言動もタブーと聞いていたが、本当にそんなことがあったのかと疑いたくなる。同氏率いる最大野党、国民民主連盟(NLD)の旗を飾るタクシーもあった。運転手はNLDを支持し、世間に対して自らの意思を表示しているのだ。街中の風景、出会う人との会話から、民主化は本物だと実感する。スー・チー氏は、噂通り抜群の人気があることがうかがえた。 

 ただし、スー・チー氏の政治手腕について不安視する声も少なからずあった。「民主化」というスローガンは良いが、その後、どのようにして国を運営していくのか、具体的なビジョンがないというのがその主な理由だ。ある工場経営者は「2015年の総選挙でNLDが大勝でもするようなことがあれば、国が混乱しかねない。今まで行政を担ったことがないNLDが政権運営できるか不安だ」と話した。

 また、スー・チー氏を支持しているというよりは、アウン・サン将軍の娘だから支持しているのだという声もあった。国家独立の父であるアウン・サン将軍のポスターや本は、スー・チー氏以上に町の露店では目立っていた。

ネピドーにある国会議事堂前の道路。日本で言えば永田町周辺にあたるが車がほとんど見られない

 ミャンマーは2006年に首都をネピドーに遷都している。『地球の歩き方』(ダイヤモンド社)では「一般観光客は立ち入りが制限されている」という理由で、ネピドーについての情報は掲載されていない。「秘密都市ネピドー」などと言われ、外国人がネピドーに入るには検問があるかもしれないと警戒したが、結局何もなかった。田んぼの中に片側4車線の道路が走り、両脇には次々に建設されている高級ホテル、宮殿のような国会議事堂、ヤンゴンのシュエタゴンパゴダを模したパゴダ……。異様な町であることに違いないが、警備体制が厳しい、軍人が目立つなどということもなかった。

(記事内写真はすべてWEDGE編集部撮影)

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◆WEDGE2012年8月号より

 

 

 

 

 

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