2024年4月27日(土)

佐藤忠男の映画人国記

2012年9月7日

 有力な児童劇団がたくさんあるのも東京の特色である。テレビの番組制作の機能は東京に集中しているから、それに必要な子役の供給源になっているのである。小林旭(世田谷区)が劇団東童、真田広之(品川区)、村田雄浩(目黒区)、林泰文が劇団ひまわり、石橋蓮司(品川区)が劇団若草、風間杜夫(世田谷区)、小栗旬(小平市)も児童劇団出身である。

 親が映画俳優だったという人も東京出身の俳優には多い。佐田啓二(1926~64年)の息子の中井貴一(世田谷区)、高島忠夫と寿美花代の息子の高嶋政伸と高嶋政宏。松田優作(1949~89年)の息子の松田龍平(杉並区)、三國連太郎の息子の佐藤浩市(新宿区)、近衛十四郎(1914~77年)の息子の松方弘樹と目黒祐樹(北区)、麿赤児の息子の大森南朋などなど。親の七光りという面もあったかもしれないが、親が有名であればあるほどプレッシャーも大きかったはずで、見事に親の良さを受け継ぎ,自分の独自のものをそこに加えている人がいる。藤田まこと(豊島区、1933~2010年)は時代劇俳優だった藤間林太郎(1899~1969年)の息子で、子どもの頃からよく映画にも出ていたという。お笑い芸人としての長い修業をへて酸いも甘いもかみしめた苦労人タイプのいい役者になった。親が大スターだった中井貴一の場合も、デビュー後20年もへてから若くして死んだ父親を超えるじつにいい味が出るようになった。

 筆者のような地方出身者は、東京人というと、とかく、身だしなみが良く、お洒落でスマートなタイプを想像するクセがある。実際は東京は地方人の巨大な集まりであると分かっているが、子どもの頃に思い描いていた東京人の見本のようなスターをあげると、まずは池部良(大田区、1918~2010年)ということになる。いい二枚目だっただけでなく、ちょっとしたポーズやしぐさも洗練されていて、優等生ふうであると同時に喜劇味もあった。長い間大根呼ばわりされていたが中年になって任侠映画の脇役をニヒルに演じるとがぜん名優と見られるようになり,晩年はエッセイストとして名をはせた。

 いかにもスマートなのに線が細すぎるせいか長年認められず、晩年書評家としての教養でアッと言わせた児玉清(北区、1934~2011年)もいる。こういうタイプが私の都会人のモデルである。石坂浩二(中央区)にはもうひと回り大きな俳優になってほしいし、伊勢谷友介(目黒区)にはたんすべからざる可能性があると期待している。東京人の力を発揮してほしい。

 なにしろ東京人は多い。書き残した人が多くて残念。名前をあげるだけだった人には申し訳ない。(次回は東京出身の女優編)

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