2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月30日

 豪・印の戦略的結びつきは中国を包囲し、封じ込める米の策略の一部との話も出てくるだろう。しかし、豪もインドもそういう冷戦時代の一面的な戦略を採用すべきではない。両国ともに中国との経済関係は深く、対話と協力に努めている。中国は豪・印関係の成熟をインド・太平洋地域の安定・開発に役立つ自然な相互依存の一部と見るべきだろう、と論じています。

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 この論説はギラード首相訪印を前に書かれたもので、ギラード訪印が、豪・印関係の改善に資すること、さらにこの改善がインド洋とアジア・太平洋地域の結びつきと安定化に役立つことを指摘しています。豪は、地理的にインド洋と太平洋を結びつける位置にあり、この指摘は、その通りです。日本としても、もとより、豪・印関係の改善は歓迎すべきことです。

 中国に関しては、包囲や封じ込めのような冷戦時代の対ソ政策のようなものは採用すべきではないと言っていますが、それではどういう政策を採用すべきなのか、議論されていません。経済的利害があるので、対中関係では対話と協力も考えるべしというようなことは、政策提言として、さして価値のあるものとは言えません。

 中国が力を振り回す傾向を示していること、最近の反日デモでの暴徒の乱暴狼藉の許容など、国際的な行動規範から大きく外れる乱暴なことをすること、国内政治面では法の支配もなく汚職にまみれた共産党幹部たちが自己利益を図ることに汲々としていることなどを踏まえ、こういう国がアジア・太平洋の安定に与える影響を出来るだけ無害にする方策を考えるべきでしょう。それには、結局、同盟国・友好国の幅を広げ、中国に対する力のバランスを作っていくしかありません。豪・印関係の改善、強化は、そういう観点から大いに意味があります。特に、ロシアが対中関係を対中協力を軸に展開している中で、インドが中国への警戒心をベースにした動きを見せているのは、意義があると言えるでしょう。

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