東、東南アジアも軍拡競争の時代に 
ベトナムの潜水艦による接近阻止戦略


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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米海軍大学准教授のジェームス・ホームズ(James Holmes)が、ディプロマット誌ウェブサイトに11月1日付で「ベトナムの接近阻止潜水艦艦隊」と題する論説を寄せ、ベトナムが接近阻止戦略に基づいてロシアとの契約によって建造中の6隻のキロ級潜水艦が中国海軍の活動に及ぼす影響がかなり大きいこと、これらの潜水艦が攻撃目的にも使えることで、中越間での武力衝突の可能性が高まることなどを指摘しています。

 すなわち、ベトナムは接近阻止戦略を採用している。その中心は2009年の契約によってロシアがベトナム向けに建造中の6隻のキロ級潜水艦である。第1隻目は既に就航、2016年までに6隻全部が調達される。これは接近阻止兵力として有効である。

 中国海軍は対潜水艦戦を軽視してきた。中国海軍はベトナム海軍に対し優位にあるが、このベトナムの接近阻止戦略で、近い将来、南シナ海は中国海軍にとり不透明な海域になると思われる。

 ベトナムの接近阻止の作戦上の特徴を考えると、色々な方法を使うのではなく、もっぱら潜水艦に頼っている。これは賢明な選択であると言えるが、同時に中国が対潜水艦戦能力をつけると、無効になってしまう怖れがある。

 ベトナムの潜水艦は防衛のみならず攻撃にも使うことができ、海南島のサンヤ基地に接近でき、そこを出入りする中国の潜水艦に脅威を与え得る。したがって、接近阻止というのは、戦略的には防衛的な姿勢であるが、中越衝突がエスカレートする端緒になりうる。

 東南アジア海域はいまでも混雑しているが、ベトナムの潜水艦が入ると混雑がひどくなり、味方、敵、傍観者の区別が難しくなる。中国、ベトナム、さらにインドがキロ級潜水艦をこの海域で運用することになり、さらに、シンガポール、マレーシアその他が、違う型の潜水艦を展開する。誤算や事故のチャンスは大きくなる、と論じています。

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 この論説は、ディプロマット誌が各国の接近阻止戦略をシリーズで掲載した中で、ホームズがベトナムを担当して書いたものです。接近阻止戦略には、中国のように地上からの対艦弾道ミサイルを使う方法や、イランのように高速水上艇を数多く展開する方法など、色々なやり方があります。ベトナムの場合、潜水艦に頼っていますが、ホームズは、それがそれなりに有効であり、攻撃的にも使えること、対決のエスカレーションを引き起こしかねないことを、的確に指摘しています。

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