世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月25日

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 日本製の自動車、家電製品を有効に数量制限したり、ボイコットすることは出来る。しかし、同時に、日本製中間部品や生産設備に対しては、慎重でなければならない。日本からのサプライチェーンがとまれば、その代替品を見つけることは難しい。昨年の東日本大震災のあと、世界の電子生産が悪影響を受けた理由はここにあった。したがって、日本製品のボイコットにあたっては、自分自身の生産、雇用などにはねかえることを知っておく必要がある、と論じています。

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 「中国改革」は、中国の官僚やビジネスマンたちに多く読まれている月刊誌です。著者たちの政治的背景やその影響力については必ずしも明らかではありませんが、今日の中国政府の考え方を基本的に反映するものとして、一定の参考価値を有しています。

 本論文は、「領土紛争」において中国が取るべき経済面での報復措置の具体例を記述していますが、これらの多くは既に中国がとったか、現在とっているかのものであり、特段目新しいというものではありません。

 注目すべき点は、これら経済措置の濫用を戒める記述はあるものの、これら諸措置が国際ルールであるWTO協定に違反する場合があることについて一切の言及がないことです。ここでも中国は、法治国家からはかけ離れた実態をさらけ出しています。そして、これらの諸措置が、先進国側が国連決議などに基づきおこなう制裁措置に対抗するものとして、正義の手段とすら位置付けられる有様です。

 また、経済・貿易活動を領土に関連した政治・外交目的のために使うことは、短期的に見て中国にとって一定の積極的効果をもたらすことはあるかもしれませんが、より長期的に見た場合、それが中国の対外活動にいかなる悪影響をおよぼすかについての考察が、本論文には決定的に欠如しています。このように経済カードを振り回すことは、WTOルールないしその精神に違反するのみならず、日本を含む周辺関係国との間での基本的信頼関係を損ねることは必定です。そして、関係国の人々は、中国との経済活動には大きなチャイナ・リスクが潜んでいるとして警戒感を強め、結果的には、中国自身の首をしめることになります。

 経済カードをめぐる中国の特異な論理に対しては、WTO協定に明白に違反する場合は積極的に提訴し、そこまでは至らないが国際的慣行やモラルに反して不当な場合は、抗議を緩めるべきではありません。一方、中国からの「勇気ある撤退」というのも、中国の経済カードを無力化するよい手段の一つでしょう。現に、日本の経済界も、中国一辺倒は改めようという動きになりつつあるようですが、それは全く自然なことです。

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