安徽大学経済学院教授の金泽虎らが、中国の政治経済評論誌「中国改革」に、領土紛争における経済・貿易手段の利用は、相手国の措置に対抗して報復的に干渉することであり、そのような経済的諸措置は先進国の専売特許ではなく、途上国も国益保護のために活用すべきものである、という趣旨の論文を発表しています。
すなわち、領土紛争など外交上の国益処理においては、経済カードを効率よく用いるのが良い。今日、中国との間で領土紛争を抱える国のうち、中国と緊密な経済関係を持たない国は一つとしてない。経済カードをうまく使うことによって、領土問題においても優位な地位を占めることが出来るだろう。経済制裁は、して先進国のみの専売特許ではなく、開発途上国が国益を守るための正義の手段として有効である。
経済カードとしては、次のようなものがある。
1)係争地域において、海外からの入札競争や外資合弁を導入する。北方領土において、ロシアが日本と領土問題を抱える中国、韓国と一緒になって経済活動を行う、というやりかたは実に巧妙である。南シナ海では、ベトナムは西側のみならず、インドの石油会社の入札を受け入れ、石油資源を独占しようとしている。中国もこの種やりかたを見習うべきである。
2)経済、貿易関係において、中国には利用すべきカードは多い。たとえば、フィリピンのバナナに対しては、バナナが長く保存できない点を利用して、質的、量的に制限を加えることが出来よう。
3)サービス貿易における制裁として、中国から海外への旅行者の数を、報復として適宜、制限する。
4)戦略物資の輸出制限を実施する。中国産のレアアースなどの鉱物資源の輸出に制限を加えるといったことである。
5)中国との間の大きな取引、交流、商談を必要に応じて制限、停止する。
6)対外援助を、政治目的に適うように活用する。
7)中国市場への参入のハードルを制限する。すなわち、輸出入制限、貿易障壁、動植物検疫、入管手続き、原産地証明などの条件を厳しくする。
ただし、これらの手段は、中国の経済資源が有限であることを考えれば、濫用すべきではない。相手国に打撃を与えるのはよいが、国際的経済貿易秩序に混乱を与えるべきではない。
尖閣(「釣魚台」)については、いかに日本を尻込みさせ、これを抑止するかが重要であり、下手をして周辺国とともに米国の懐にさらに深く逃げ込むようなことをさせてはならない。そのためには目標をはっきり定める必要がある。