2024年4月27日(土)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年3月27日

断定的、画一的な治療法は避けるべき

―― 薬漬け治療については、いかがですか。

芝山:もちろん私も薬はよく使用しますが、なるべく少ない量、少ない種類を原則にしています。こんなことがありました。うつ状態で通院加療中の60歳代女性の患者さんとの実際の話ですが、抗うつ剤としてルジオミール10mgを投与し改善傾向が見られました。しかし、抑うつ傾向が見られたため25mgに増量しました。薬理的には効果が出るはずですが、その患者さんは不安で逆に悪くなってしまいました。同じ薬でも量が違うと色と形が変わります。黄色い薬がオレンジ色になる、丸から楕円形になるので不安になったようです。

 結局、10mgに戻したところ抑うつ傾向が改善しました。つまり投与する量を増やすことで薬理的には効きますが、そこに人の感性が加わると効果が出ないことがわかります。薬が効かないから量を増やす、患者さんの不安が増しているので、それを取り除く薬も増やすようなことでは、十分な治療効果は得られないと考えています。薬漬けは、医者側の不安解消のため、という気がします。

 薬を否定する気持ちはありません。薬は治療を支える何本かの柱の一つであると考えるべきでしょう。一つの柱ばかり強度を増しても、バランスがとれなければ、その上にある構造物は支えきれません。薬は必要ないということではなく、薬を使いこなす治療を心がけるべき、ということが言いたいだけです。その人にあった治療があるので薬だけ、認知行動療法だけ、カウンセリングだけ、という断定的、画一的な治療方法を取るべきではないと思います。

[特集] 「心の病」にどう向き合うべきか?


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