世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月12日

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 FTのコラムニスト、デイヴィッド・ピリングが、ミャンマーのNLD党大会に際して、3月13日付同紙コラムで、NLDとアウンサンスーチーが反体制勢力から脱皮して政権担当能力を持つには、多くの課題があり、ミャンマーの変革が停滞する可能性がある、と論じています。

 すなわち、25年間ミャンマーの自由な選挙を求め続けてきた、アウンサンスーチー率いるNLDが、ようやく自らの党内選挙を実施することができ、約1000人の選挙人団がヤンゴンに集まって中央執行委員を選出した。

 皮肉なことに、党の全てのメンバーが、選挙という考え方に満足しているわけではない。

 軍事政権下での長年の地下活動の後、NLDは、政権担当能力を持った政治組織への変革を目指して格闘している。長年にわたる投獄、拷問を経た者もいる、古参のメンバーたちは、若い者がのし上がっていくことに不満である。

 変革期にある社会について研究してきた、英国の歴史学者Timothy Garton Ashは、ミャンマーの変革プロセスが、停滞する可能性がある、と懸念している。アウンサンスーチーを大統領にさせる可能性のある総選挙は、2015年まで行われない。それは、国どころかティーショップすら経営したこともないような、経験不足のNLDに、政権を担当する準備期間を与えることは事実だが、一方で、変革を忘却させることにもなろう。

 1948年の独立以来続いている民族紛争が、2015年までに政治的解決を見なければ、おそらく、それが最大の危機となろう。ミャンマーの5500万~6000万の人々のうち、約30%が、多数派のビルマ人以外の少数民族の出身である。少数民族が、連邦においてそれなりの代表権を得ていると満足できなければ、少数民族出身の政治家たちは、公然と独立運動に乗り出そうとするかもしれない。そうなれば、最悪の場合、ユーゴスラビアのように国家分裂に陥る可能性がある。

 民族的緊張の解決のためになされた進展は、ごく表面的なものに過ぎない。軍政から移行した文民政府は、いくつかの少数民族グループとの間で、停戦合意に署名したが、少数民族の地域に一定程度の真の自治を与えるという政治的解決に達するのでなければ、停戦は続かないであろう。最近、2011年に戦闘が再発したカチン族との間で暫定的な停戦合意がなされたが、軍は、かつての残虐行為を非難されている。アウンサンスーチーが、神格化された反体制家から大統領候補へと変革を遂げるにつれて、こうしたことすべてが、彼女を窮地に追い込んでいる。彼女は、虐げられているカチンとラカインの少数民族のために強い言葉を発していない、と非難されている。彼女はまた、軍への好意を強調したが、それは、民族的少数派を安心させると思えない言葉である。

 彼女が大統領になるようなことがあるとすれば、それには軍の承認が必要となる。現行憲法は、彼女が外国人である、故Michael Arisと結婚していたことにより、大統領就任を禁じており、この憲法は、最近退役した軍人と現役軍人が優勢を占める議会で、75%の多数を得なければ覆されることはない。

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