世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年9月16日

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 8月14日付International Herald Tribune紙にて、Paul Kennedy米イェール大学教授は、世界大戦時に比べれば、現在の大国は行動を自制しているので、今後長期にわたって大きな戦争のない時代になるかもしれない、と述べています。

 すなわち、現在、世界には、米ロの不和、日中の対立、EUの混乱等様々な問題があるが、歴史家に言わせれば、それだけである。

 来年(2014年)は、第一次世界大戦開戦から丁度100年となる。当時の世界政治は殆どが大国の政治で、幾つかの大国の振る舞いは実に悪かった。1914年には、大国の政府は無謀に振る舞い、地球を史上最も血なまぐさい紛争に陥れた。

 今日の世界の諸国との対比は著しい。どの国が地域の大国で、どの国が大国かを言うのは困難だが、敢えて挙げれば、ブラジル、インド、日本、ロシア、欧州、中国、そして米国が7大国である。これらの大国は全て自己中心で狭量であり、あと2、3年政権を維持するのに精一杯だが、トラブルメーカーではない。これら諸国は世界秩序が変わればどのような負の結果がもたらされるか分からないので、国際関係の現状維持に多大の利害を有している。

 トラブルメーカーとトラブルの根源は、北朝鮮、シリア、中央アフリカ、エジプト、アフガニスタンである。

 かつてのカイザー、ヴィルヘルムやムッソリーニ、ヒトラーのような指導者は有難いことに北京、モスクワやニューデリーにはいない。

 現在の大国は、お互いに不満はあっても一般に行動を自制している。

 そうであれば、1815年以降欧州で大国間に未曾有の平和がもたらされたように、今後長期にわたり、大きな戦争のない時代になるかもしれない。

 依然として多くの戦争があるだろうが、それは地域紛争で、残虐行為や非人道的行為があるとしても、大国を紛争に巻き込むことはないだろう。大国は大国で、必要とあれば、支援する国に国際秩序を壊さないよう圧力を加えるだろう。

 大国が払わなければならない代価は自制である。これが忘れられれば、1914年のような危機が再来しかねない。当時ロシアは問題児の衛星国セルビアを押さえず、オーストリア=ハンガリーはベオグラードに無謀にも最後通牒を突きつけた。ドイツはビスマルクの配慮を忘れ、オーストリアを支持した。弱いロシア皇帝は自国の軍事計画を管理できなくなった。プロシアの軍隊はベルギーを占領し、大英帝国の参戦を招いた。

 核兵器の存在が大国の行動を自制するとはいえ、1914年当時のような愚行が繰り返されないと言えるだろうか。

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