2024年4月26日(金)

日本の漁業は崖っぷち

2014年1月8日

漁業技術の進歩とその平和的利用の必要性

 宇宙航空研究開 発機構(JAXA)と漁業情報サービスセンターは、人工衛星「しずく」を活用してサンマやマグロの漁場を効率よく探す手法を開発しました。観測データをもとに水温の分布を調べ、これまでの経験も参考にして魚が集まりやすい場所を約3000の漁船に伝えて試したところ、魚の群れを探し回る労力が減り、燃料が平均2割削減できたそうです。

 ノルウェーのシムラッド社が販売しているソナー(超音波を発信し、その反射波から水中の物体や魚群を探知したり、深さを測ったりするのに用いる装置)・魚群探知機は、4km離れた魚群でも鮮明に映し出す能力を持っています。魚の位置だけでなく、大型魚からプランクトンの種の識別、他にも体長や生物量などの情報が大幅に増加し、海洋科学調査の精度を飛躍的に向上させ、世界の海洋調査船や海軍にも導入されています。日本でも昨年完成した第51開洋丸が導入しています。

 もちろん海は広く、どんなに漁業機器が発達しても、科学的知見を完全に得ることはできません。不確実性が常につきまといます。しかしながら、上記のようなハイテク機器ができる前から、現在漁業で成長している国々では、できる範囲で科学的知見を蓄え、判断材料として利用してきました。それが現在の繁栄につながっているのです。正確な資源量の把握以上に大切なことは、魚を獲り過ぎないことです。

 上記の4km先まで鮮明にわかるソナー・魚探は中国、韓国、フィリピンといった国々での需要が急増しており、直近の2年間で50台以上が民間の漁船に導入されているそうです。

 個別割当制度が導入されていない国々で、このような衛星やハイテク漁業器具を使って漁業がなされた場合、乱獲により資源の枯渇につながっていくリスクが高いことは想像に難くありません。排他的経済水域(EEZ)をまたいで回遊するサバ、アジ等の多獲性魚種が日本のEEZを回遊する前に漁獲されてしまえば、日本で漁獲できる資源量は減少してしまいます。日本の漁船が導入した場合でも、インプットコントロール主体の今の管理では、同じように漁業者間の競争により、さらに資源を悪化させる要因になりかねないリスクがあります。一方で、個別割当制度のもとで使用されれば、燃料費の削減や、操業の大幅な効率化につながります。

 同社は、上記のソナー・魚探は資源量の推定だけでなく「乱獲防止につながる」と言っています。しかし、これはノルウェーを始めとする個別割当制度導入国には当てはまっても、日本や中国、東南アジア等のこの個別割当を導入していない国々にとっては、乱獲に直結する極めて危険な漁具(=武器)となりかねない怖さがあるのです。漁具の平和的利用ができるかということであり、まさに紙一重です。


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