2024年4月26日(金)

社食に企業の想いあり

2014年1月10日

 「校庭はサッカーをやったり縄跳びをやったり、課外授業を行ったり体育祭のようなイベントをしたり、自由な場所です。Nagomiもそんな自由な場所にしたいと思いました」

 このコンセプトはNagomiだけではなく、オフィス内の各フロアに設けられた「Tsudoi」というスペースにも共通している。Tsudoiは、オフィスのセンターを抜いて階段にした周囲のガラス張りのスペース。ここも社員たちが好きな用途に使うことができる。社員が集い、自由に使えるスペースを増やす代わりに減らしたのが会議室だ。

Nagomiでは自社商品を使ってプレゼンなども行える

 「会議室の使用率を調べたら60%しかなかった。そもそもそれほど会議室は必要なかったということもあります。また、そもそも会議室は生産的な場なのかという疑問がありました。壁に囲まれた、周囲から見えない環境で何時間も話し合うことが生産性が高いとは思えなかった。壁をなくし、ガラス張りにして周囲からの視線が感じられるような適度な緊張感のなかで仕事をしようという意図があります」(井上さん)。

 グループ会社とはいえ、移転前までは日常的な交流はなかなかなかった。これまで関わりのなかった他のグループ会社や他部署と、だいぶ距離が縮まった。

飲料事業を行うキリンが
社食機能をあえて持たなかった理由

 それでは、マルチスペースNagomiがなぜ「社食機能」を持たなかったのか。「もちろん、社員にとっては安くて手軽に食事できるスペースがあれば良かったとは思います」と井上さん。

 「理由としては、ビジネスの場所であることを優先してフロア割りをしたかったこと。でも、一番大きかったのは近隣にたくさん飲食店があるからです。私どもの仕事は飲食業の方と深い関わりがあるので、中野の飲食業の方たちとさまざまなかたちで接点を持ちたかった。このビルにも飲食店はありますし、この環境で私たちが社食というかたちで飲食ビジネスを開く必要はないと考えました」

 キリンビールやキリンビバレッジ、小岩井乳業、ワイン事業を行うメルシャンなど、同社の商品の多くは飲食店に納入される。社員たちが普段から飲食店に足を運び、実際に店で食事を楽しむこと、地元の飲食業を知ることも大切と考えたというのだ。


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