ヒットメーカーの舞台裏

2015年1月2日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 実際、どの家庭でも庫内を捜索すればいくつかの賞味期限切れ調味料が出るのではないか。冷蔵庫でストックされる調味料が「選択される時代」(伊藤)という現状認識が、万能性の高い商品開発へと進むきっかけになった。

伊藤秀一郎 (Shuichiro Itoh)
(食品事業二部 チームマネージャー) 1976年生まれ。2000年京都大学大学院農学研究科修了、ハウス食品入社。学生時代には食べ歩きし、欧州ではスーツ持参で格式あるレストランにも。入社後は研究所で健康食品などを開発。08年に現職に移り、練りスパイスなどを担当。手掛けた商品で家族を笑顔にできることが嬉しいという。

 同社の研究所も、それにかなう商品のシーズ(種)を開発していた。各種のドレッシングやたれなど液体調味料に含まれる共通の調味素材が「砂糖」「塩」「酢」であると着目、これらをベースにすれば万能性をもった合わせだれの「素」ができると、商品化を方向づけた。

 ただし、3つの調味素材だけでは万能にならない。完成品には野菜や香辛料など様々な素材が加えられているが、ポイントとなったのは玉ねぎだった。

 タルタルソースやピザ用ソースなどでも玉ねぎは欠かせない素材であり、まさに万能性があった。もっとも、生の玉ねぎを使うと水っぽくて今ひとつ。食感を残すためにも「乾燥玉ねぎ」を使うことにした。

 成分を決めるレシピ開発には3カ月を要した。「約100種類の配合を、人海戦術で評価した」という。だが、伊藤が「それ以上に困難だった」と振り返るのは、従来にない商品なので「お客様にどうご理解いただくか」という、訴求の仕方であった。

 このため、ネーミングの候補は、同社でも異例の500ほどにも及び、絞り込むまで多くの曲折もあった。「マジック」という言葉で「変身や驚き、楽しさといったこの商品を端的に表現できた」—レシピも含めて難航した分、伊藤の笑顔からは自信が伝わってきた。(敬称略)

  
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◆Wedge2014年12月号

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