WEDGE REPORT

2015年5月15日

»著者プロフィール
閉じる

岡田仁志 (おかだ・ひとし)

国立情報学研究所情報社会相関研究系准教授

1988年東京大学法学部卒業。大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程中退。博士(国際公共政策)。総務省情報通信政策研究所特別上級研究員を兼任。著書に『電子マネーがわかる』(日経文庫)。

 リップルの送金サービスを利用するためには、各国に複数開設されるゲート・ウェイと呼ばれる組織に登録する必要がある。そして、仮想または現実の通貨を送金して、その額に応じた利用枠を設定する。いわば、前払い式の資金移動サービスに類した構造である。このとき、送金した額の対価として払い出されるのが、IOU(I Owe You:債務を負う)と呼ばれる、電子的な債務証書である。

 IOUはゲート・ウェイを債務者とする電子債権に近いが、債権譲渡の構成をとらない。ゲート・ウェイは顧客の与信枠を管理する信用機関であり、与信枠の範囲で利用者は資金移動サービスを利用できる。すなわち、IOUはリップル送金サービスの利用券である。リップルという送金装置を利用する際には、この利用チケットをリップル通貨(XRP)に置き換える。あたかも、リップル通貨が金本位制の金であり、IOUは兌換紙幣のようにもみえる。

 だが、そうではない。IOUという債務証書を発行するのは各国のゲート・ウェイであり、米国のリップル・ラボはその価値を担保しない。価値の安定性は、発行者であるゲート・ウェイの財務健全性に依存する。本来、リップルは送金サービスであり、リップル通貨はその利用者にとって意味がある。リップル・ラボは15年3月に「日本の皆様に対する勧告:XRPの役割の説明」と題する公式声明を投稿し、短期の利益を目的としたリップル通貨(XRP)の販売をリップル・ラボは推奨していないことを宣言した。本来の開発目的を再確認したといえる。

 ビットコインやアルトコイン、さらにはリップルが競争を繰り広げる中で、決済ビジネスを制する企業は誰であろうか。おそらく有利な立場にあるのは、伝統的な金融機関と、仮想通貨の技術を使いこなすIT企業の共同体であろう。法制度の整備を条件として、仮想通貨ビジネスの基盤が成立することに期待したい。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2015年5月号より

関連記事

新着記事

»もっと見る