2024年4月27日(土)

World Energy Watch

2015年6月10日

 『「里山資本主義」では持続可能な社会をつくれない』で触れた通り、日本では観光・外食産業が作り出す1人当たりの付加価値額は大きくないからだ。製造業の1人当たり付加価値額約750万円の半分にも達しない。付加価値額、つまり稼ぎが少ないので、1人当たり給与も大きくない。訪日外国人を増やし、消費する金額を伸ばせばよいとの考えもあるが、この分野で大きな成長を作るには限度がある。

 結局、日本は製造業を中心に成長を作り出さなければ、1.7%の経済成長の実現は難しいのだが、空洞化が進み国内生産が伸び悩むとされる日本で製造業は成長可能だろうか。

空洞化ではなくデフレにより
力を失くした製造業

 アジア諸国における日本製品のシェアは下落を続けている。図-4はアジアの主要国の輸入における日本のシェア推移を示している。どの国でも波を描きながら日本のシェアは低下を続けている。中国、韓国の進出がありシェアを落としている側面はある。しかし、他の主要先進国との比較では、日本の輸出の伸びは相対的に低い状態にある。図-5が示すように、ドイツを筆頭に、他の先進諸国は輸出を日本以上に伸ばしている。

 なぜ、日本の輸出は相対的に伸びなかったのだろうか。日本企業だけ海外生産が増え空洞化が起こったためだろうか。それは正しくない。失われた20年間で日本の製造業が随分力を失くし、成長産業で他の先進諸国に遅れを取ったからだ。海外での製造を含め日本の製造業が力を失くした20年だったのだ。

 図-6は日本からの製品の輸出と日系企業の海外生産の売上の推移を示している。海外生産が増えれば、日本からの輸出も増えている。空洞化であれば海外生産が増えれば、日本からの輸出は減少するはずだ。日本製品に対する需要の増減が国内外の日本の製造業の生産に影響を与えているということだ。

 日本の製造業の一部では空洞化現象があったが、それよりもデフレのために製造業全体が競争力を失っているのが日本の姿だ。デフレにより競争力を失ったのは、設備投資を削減したからだ。デフレ下で最も賢明な資金の使途は借金返済だ。デフレは借金の実質的な価値を膨らますから当然の選択になる。日本の製造業の多くの会社は賢明だった。
 

 


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