2024年4月27日(土)

家電口論

2015年10月12日

ベルリンは戦争痕跡をリアルに確認できる

 ベルリン中央駅を起点に、ブランデンブルグ門、もしくはポツダム広場を終点にすると、この3つを歩いて廻って約3時間です。全て東京で言うと一等地です。日本だと「碑」を建てて終わり、よくても博物館にモノを入れて終わりですが、ベルリンは野外、しかもリアルですから、インパクトは痛烈です。

 しかも、この3つ対象が別々なのです。ソビエト戦勝記念碑は、第二次世界大戦の敗戦。ベルリンの壁は、冷戦。 ホロコースト記念碑は、ユダヤ人。これは見方を変えると、ドイツは自分たちが仕掛けた戦争(ナチスは正統な選挙により、国民が選んだ政党です)を、追体験する環境にあると言えます。今回は、3時間で巡ることができるということで、3つとしましたが、これ以外にもユダヤ人に関する碑、戦争に関する碑、冷戦に関する碑は大量にあります。多分、ドイツが周りから、戦争責任を問われにくいのは、このような姿勢があるからではないでしょうか?

 しかも、あるのが首都ベルリンの一等地。そして、ホロコースト慰霊碑は、2005年ですから、21世紀に新たに作ったわけです。ドイツは未だに、戦争の意味を問い続けているのが感じられます。

つながりを断たれたユーザーはそのメーカーを見限る

 同じような感触を家電で持ったことがあります。シャープのピュア・オーディオの話です。多くの人はシャープがピュア・オーディオをしていたなんて知りませんよね。昔の話ではありません。2000年代の話です。個人的な思い出ではありますが、1998年の1ビットデジタルアンプの音は、あまりにもスゴすぎて、未だに耳に残っているほどです。

 当時、いろいろな人にシャープの話をしてみました。多くの人は、「シャープはスゴい」との解答でしたが、一人「シャープはメーカーとして良くない」という方がいました。理由は「ユーザーを見ていない」からです。実際、シャープは、約10年で、このピュア・オーディオを止めてしまいました。シャープを信じ購入したユーザーはどんな気持ちだったのでしょうか?

 趣味とはいえ、10万円以上する機器を購入したのですから、メーカーとのつながりが切れるのは心持ちが悪いわけです。継続性があり、それを裏切らないということは、重要なことです。他の製品はともかく、再度シャープがオーディオ製品を出しても買う気にはなりません。この事例と同じように、ドイツのアピールに対し、日本の戦争に関するアピールは、継続性に欠ける。私は、そんな感じがするのです。

 首都の一等地に戦争遺産を残し、継続してメッセージを発し続けるドイツと、内閣ごとに考えが異なる日本。日本が諸外国の支持を受けるなら、「継続」は非常に大切です。それは国だけでなく、法人であるメーカーも重要なことです。常にアピールし続ける。これが、今の日本には欠けているように思います。

  
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