オトナの教養 週末の一冊

2015年12月13日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

オバマ政権で変化起きた米国

ーー01年から09年までは保守派とされるジョージ・W・ブッシュ大統領で、その後リベラルとさられるオバマ大統領に変わりました。オバマ政権になって特に変わったことはありますか?

渡辺:経済面を見ると、オバマ大統領は、08年のリーマンショック後に、かつてのニューディール政策の時代のように、政府が市場に介入し金融規制を行おうとしましたが出来ませんでした。オバマケアを導入しようとすれば「社会主義者」と罵倒される。経済面での「個人化」のうねりに逆らうことは容易ではないということです。

 一方、社会面に目を向けると、同性婚の容認やマイノリティの権利擁護などいわゆるリベラルな政策が目立ちます。オバマ大統領は民主党ですからリベラル派に属するわけですが、社会面での「個人化」、つまり社会全体がリベラル化している点は総じて彼にとって有利に働いています。

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ーー1950年代以降、共和党、民主党の2大政党制のもと政権が代わっていて、経済面、社会面双方で個人化が進んでいると。そうするとアメリカにおける保守とリベラルの対立は、日本人からすると分かりづらいところがあると思うのですが。

渡辺:ヨーロッパの重要な3つのイデオロギーについて考えてみます。ひとつは保守主義。この場合の保守主義とは貴族主義で、ヨーロッパにはかつての国王や貴族とつながるような人たちがいて、人間には何百年にもわたってつくられた知恵や秩序があり、多少の格差は致し方ないと。それを強引に改めようとするのではなく、各自がそれぞれの居場所で役割を果たすべきだという、変化を嫌う保守主義があります。逆に、それに真っ向から対立し、より平等・公正な社会を目指そうというマルクス主義があり、その真ん中に政治権力や宗教権力からも自由になりたいという自由主義があります。

 アメリカという国は元々貴族を否定した社会だからヨーロッパ流の保守主義はありませんし、大英帝国のような政府の干渉を嫌いますからマルクス主義もないに等しいわけです。そう考えると、自由主義しかありません。その自由主義の中で、政府の役割を多少増やすのか、減らすのか。つまり、自由主義の中の右と左、「コカ・コーラ」か「ペプシ」かの違いくらいしか保守とリベラルの差はありません。だからこそ、相手と差異化を図ろうと、日本人からすると驚くような細かな争点で争いごとが起きたりするんです。

 またイギリスや日本のように長い歴史がないがゆえに、逆に短いからこそ「アメリカとはそもそもどういう社会であったか」という歴史認識が重くなり、政治化されやすい。

ーー渡辺先生はアメリカへフィールドワークへは何度も訪れていますが、実感として変わったなというのはどういったところでしょうか?

渡辺:今年9月に訪米したのですが、アメリカは人工的に作られ、かつ世界で最も多様な人種や民族、宗教で構成された国ですが、その実験を支えなければいけないという市民的な美徳というか、寛容の精神があるなとあらためて思いましたね。これはニュースで報じられる人種差別や重犯罪とは異なる、日常レベルでの実感です。

 日本だと小さなミスを責め立てられたり、社会全体としてパーフェクションを求めるところがあります。アメリカは、その辺はおおらかで、誰でもミスはするし、多様な人たちの中でパーフェクションを期待しても成り立たないという共通理解があり、そこは心地良いですね。それは私の好きな表現で「That's all right」であると同時に、「why」ではなく「why not?」という雰囲気がある。あらためてそう感じましたね。アメリカと比較すれば、日本は良くも悪くも部分最適を重んじる社会かもしれません。細部に気を配り繊細だけど、逆に、大きく仕掛けることは苦手というか。

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